LIBOR(およびその他のIBOR)の変更について

20 分間で理解する 22年8月3日

2021年末、LIBORに代わる新たな指標金利が開始されました。金融規制当局は、この移行について業界のワーキンググループと密接に連携しています。ここでは、移行とM&Gのアプローチについて、よくある質問にお答えします。

英国の金融行動監視機構(FCA)は2021年3月5日、LIBORの公表を停止または裏付けとなる市場の指標性を喪失する日を発表しました(下表を参照)。英ポンドLIBORは英ポンド翌日物平均金利(SONIA)に置き換わっており、米ドルLIBORは担保付翌日物調達金利(SOFR)への置き換えが進んでいます。その他の通貨のLIBORは、それぞれのリスク・フリー・レート(RRF)に置き換えられました。ほとんどの英ポンドLIBORは2021年末に廃止されましたが、レガシー取引での使用に限り3種類のLIBORは公表が継続され、毎年規制当局の承認が見直されます。米ドルLIBORは2023年6月末の公表停止が予定されています。

M&Gは、LIBORとその他のIBORからそれぞれの代替金利への移行を円滑にするための全社的なプロジェクトチームを編成しました。移行に起因する投資価値への影響は最小限になると予想され、移行によりお客様に不利が生じないよう万全の準備を進めます。お客様が特別な手続きをする必要はありません。お客様の投資に重大な影響が生じ、適切と判断される場合には、その旨をお知らせします。

概要

LIBOR改革とは何か

LIBORは「ロンドン銀行間取引金利」の頭文字であり、銀行間の主要な短期貸出金利(実際にはさまざまな金利の総称)でした。30年以上にわたり金融市場でもっとも多く使用されていました。誕生以来、金融契約において、利息を決定するための指標として使用されてきました。

2021年12月末をもって、24のLIBORセッティングについては指標性としての公表が停止されました。残りの主要な米ドルLIBORは2023年6月末まで延長されています。LIBORの代替には、SONIA(英ポンドLIBOR)やSOFR(米ドルLIBOR)などがあります。こうしたRFRの適合性は、業界全体の協議を通じて評価されています。

なぜLIBORが廃止されるのか

金融当局は、LIBORについて次のようないくつかの問題があるとしています。

  • 2008年の金融危機とそれに伴う金融市場の構造変化の影響により、LIBORは銀行間の貸出金利としての機能を失い、結果として取引量が減少していた。
  • LIBORは、金融の安定にとってのリスクである。数百兆ドルという金融商品の価格が、比較的少数の個人による、ごく少数の無担保銀行間取引に基づいた判断に左右されていた。
  •  ベンチマーク規制の導入以前は、LIBORを操作できる余地があった。

SONIAとSOFRとは何か

1997年に誕生したSONIAは、これまで英ポンド建ての無担保翌日物取引のベンチマークとして使用されてきました。SONIAは適格英ポンド建て預金取引に支払われる金利の指標となっています。2016年4月以降、イングランド銀行が管理および公表を行っています。

SONIAは、取引量の多い流動性の高い市場をベースにした、より強固な金利指標であることを主な理由として、英ポンド・リスクフリー・リファレンス・レートに関するワーキンググループ(RFRWG)によって英ポンドLIBORの代替指標に選出されました。

SOFRは、2017年に代替参照金利委員会(ARRC)により米ドルLIBORの代替指標に選出されました。SONIAと同様に、取引をべースにした翌日物金利です。SOFRは連邦準備制度(FRB)によって公表および管理されています。

SONIAとSOFRはLIBORと何が違うのか

SONIAとSOFRは、過去の取引をベースにしたベンチマークであり、ホールセール市場での翌日物貸出金利を反映しています。つまり、期間にともなう(流動性)プレミアムやクレジット・プレミ アムがないため、ほぼ完全なリスク・フリーとなっています。

対象的にLIBORはフォワードルッキングの金利で複数の通貨に対応しており、クレジット・リスクプレミアムや流動性リスクプレミアムが含まれます。また、SONIAとSOFRは、支払日近くにならないと金利が計算されないため、12ヵ月物までの金利を使用するLIBORとは金利計算期間の慣行が異なっています。

その他の導入される代替金利にはどのようなものがあるか

その他のLIBORは、次のRFRへの置き換えが進められています。

  • ユーロLIBORはユーロ短期金利(ESTR)
  • 円LIBORは東京翌日物平均金利(TONAR)
  • スイスフランLIBORはスイス翌日物平均金利(SARON)

詳細については、上記の「代替指標金利タイムライン」をご参照ください。

IBOR廃止の当初のスケジュールは予定どおりか

24の LIBORセッティングは2021年12月末をもって、指標性を維持した形での公表が停止されました。残りの主要な米ドルLIBORは2023年6月末まで延長されています。この延長により、米ドルLIBORを参照した契約のうち、延長期間中に満期を迎える契約に対して変更などの措置を講じる必要がなくなり、また業界が最終的な移行に向けて万全の準備を行う猶予期間が長くなりました。さらに、シンセティックLIBOR(一部の英ポンドおよび円を参照する契約)については、規制当局により、期間限定(現時点では2022年末)でレガシー契約における継続使用が認められています。

投資戦略への影響

指標金利がLIBORから新しいRFRに変更されることにより、お客様の投資資金はどのような影響を受けるか

指標金利がLIBORから変更されることにより、投資戦略が受ける可能性のある主な影響は次の3点です。

1.  現在、投資戦略の資産価値または資産から生   じるキャッシュフローがLIBORまたは他のIBORに直接リンクしている銘柄。例えば変動利付債や資産担保証券を保有している場合。時間の経過とともに、投資戦略が保有する銘柄は導入されるRFRにリンクするキャッシュフローに切り替わります。
2.  投資戦略のパフォーマンスのベンチマークが3ヵ月の英ポンドLIBORなど、LIBORまたは他のIBORにリンクしている場合。パフォーマンスの指標金利として最適な金利、おそらくは新RFRに変更する予定です。
3.   投資戦略が支払う他戦略の成功報酬が、IBORにリンクしている場合。

2021年末の英ポンドLIBORの停止に向けて、M&Gは上記の2番目と3番目の影響に対応しました。プロダクトのベンチマークおよび成功報酬の金利指標は、LIBORからRFRなどの代替金利への移行が完了しています。引き続き投資戦略への影響を追跡管理して参ります。

移行が正式となる時期はいつか

ほとんどのIBORは、2021年12月31日に予定どおり廃止されましたが、大半の期間の米ドルLIBORは2023年6月30日まで使用が継続されます。M&Gは、お客様への影響をできる限り最小限に抑えながら必要な変更をスムーズに行うために懸命に取り組んでいます。そのために適切と考える日程を採用しています。

M&Gは導入されるRFRと現在のIBORのスプレッドをどのように算出する予定か

IBORと代替RFRのスプレッド算出方法は、国際スワップ・デリバティブ協会(International Swaps and Derivatives Association 『ISDA』)が公表した『IBOR ISDA フォールバックプロトコル』と『IBORフォールバックサプリメント』で規定された信用スプレッドの調整方法に基づきます。M&Gは2021年1月にISDAのプロトコルに従うことを決定したため、2021年12月31日以降、米ドル以外のLIBORを参照するすべてのスワップおよびデリバティブのポジションのフォールバックに適用されています。米ドルLIBORについては、予定されている2023年6月30日の公表停止後にこのフォールバックが適用されます。

M&Gは、フォールバック調整ベンダーとして選定されたブルームバーグが提供する信用スプレッド調整レートを使用します。

 

M&Gの準備

LIBOR移行に向けたM&Gの進捗状況はどうか

M&Gは2019年3月に、お客様への影響を最小限に抑えながら新しい指標金利への移行を管理するプログラムを導入し、大幅な リソースを割り当てました。

このIBORプログラムでは、以下諸点に焦点を合わせています。

1. M&Gが運用する資産への影響を特定し管理します

A. M&Gは、運用する資産のなかでIBORを使用している銘柄を月次で調査しています。このデータは、運用担当者が、IBOR を参照する資産を、どの程度新RFRを参照する資産に切り替えたかを把握するのに役立ちます。2021年12月以降、および英 ポンドLIBOR英ポンドの公表停止後も、シンセティックLIBORを使用している銘柄(規制当局により期間限定で使用が認め られています)の調査を続けています。

B. M&Gのアナリストおよび運用担当者は、お客様にとって最大の利益になると考える順番で、IBORを参照する銘柄を削減 しています。

C. M&Gでは、運用担当者がIBORを参照する資産への投資に関するガバナンスを確実に遵守するように積極的に指導してい ます。

D. M&Gのプライベートアセットチームは、英ポンドLIBORを参照する既存の融資契約の大部分の移行を完了しており、引き 続き米ドルLIBORおよびシンセティック英ポンドLIBORを参照する既存契約の移行に取り組んでいます。

2. M&Gのプロダクトに与える影響を特定し把握しています

A. M&Gの各プロダクトチームは、ベンチマークとして、または成功報酬のベースとして参照していたIBORの置き換えを完 了しました。

B. 上記の変更に合わせて、マーケティング資料および目論見書を更新しました。

C. LIBORやその他のIBORを参照する投資運用契約(IMA)を更新しました。該当する場合には、修正案を作成し、お客様の同意を得ています。

3. 事務プロセスとシステムに与える影響を特定し把握しています

  A. M&Gのシステムを評価した結果、システムに与える影響は最小限であり、事業に重大なリスクを与えないことを確認しま   した。

  B. M&Gが契約するシステムベンダーを含めたサプライヤー全体が、IBOR廃止の影響に対処する信頼性の高いプログラムを   有しており、準備状況を理解するために全社とエンゲージしています。継続的なモニタリングとサプライヤーとの話し合い   を持つ必要がある分野を特定し、今後もサプライヤーのモニタリングを継続します。

C. 事業部門によるプロセスのレビューは完了しており、潜在的な問題が特定された分野では、事務フローへの影響を最小限 に抑えるための計画を立てました。M&Gは新しいRFRに対処する事務フローを既に確立しています。また、既に新しいRFR にリンクする銘柄を売買しており、LIBORを使用していた一部銘柄に関しても代替金利指標への移行が完了しています。

4. 業界他社との議論に積極的に参加しています

A. M&Gは、業界団体や業界ワーキンググループなどを通じて、決済前デリバラブルのIBOR移行に関する議論に積極的に参加しています。議論に参加することにより、規制や市場動向について常に最新の情報を得ることができます。

B, M&Gは、移行プロセスの進捗状況に関して、FCAの監督官やその他の規制当局の担当者と継続的に緊密な対話を続けてます。

C. M&Gは、IBORからの移行に関する協議がお客様に影響を与えるかどうかを慎重に検討し、必要に応じて対策を講じています。

D. M&Gが業界関係者とエンゲージすることは、IBORからの移行と、引き続きIBORを参照する銘柄についての対応に関して、M&Gがどのような行動を取るべきかを理解するのに役立ち、それはお客様に確実に最適な結果をもたらすことにつなが ります。

IBORを参照する資産・プロダクトの参照金利変更で問題が生じる可能性があるか

資産

M&Gが投資している変動利付債などIBORにリンクした資産の場合、発行体に積極的にエンゲージし、発行体によるIBORからの移行計画を把握するよう努めています。多くの場合、このような証券のIBORから別の指標金利への移行手続きは、発行体に依存します。

M&Gがローンを保有している場合、M&Gは、IBORの廃止に対応するために、借手およびローンのエージェントと協力して案件条件を適切に修正することに努めています。これは、借手、そして多くの場合他の貸手の同意が必要になります。英ポンドLIBORを参照していた既存の融資案件の移行は完了していますが、現時点でいくつかの案件はシンセティックLIBORを使用しています。シンセティックLIBORや米ドルLIBORを使用している民間貸付については別の指標金利への移行を進めています。

LIBORを参照しているデリバティブについては、主要なスワップカウンターパーティに合わせてISDAフォールバックプロトコルを採用しています。M&Gの英ポンドLIBORを参照するデリバティブの多くは、ISDAプロトコル、およびロンドン・クリアリング・ハウスによる清算済みスワップの転換プロセスに従い2021年末に移行を終えました。米ドルLIBORを参照するスワップの移行は、同じくISDAプロトコルと清算機関の手順を使用して行う予定です。

プロダクト

LIBORにリンクする全プロダクトの規定について、RFRなどの代替金利への移行を完了しました。

M&Gはどのようにお客様とコミュニケーションを取る予定か

M&Gは、2020年から2021年にかけて、LIBORにリンクするプロダクトの移行を完了させ、お客様とコミュニケーションを取ってきました。

今後も、こうしたプロダクトのLIBORにリンクする原資産に対する変更に伴い重大な影響が生じる場合には、お客様とのコミュニケーションを続けて参ります。

M&Gは、IBOR廃止に関する市場関係者による取り組みに依存するか

IBORの移行は全世界的なものであり、市場参加者やさまざまな規制機関が推進しています。M&Gは、RFR使用に向けた移行アプローチや市場慣行形成に関する業界の議論に積極的に参加してきました。

主要な依存関係のほとんどは、2021年末の英ポンドLIBORの公表停止前に解消されました。その結果、米ドルLIBORの移行を管理するアプローチは、これまでに行ってきた取り組みの恩恵を受けています。

引き続き、米ドルLIBORからの移行および新規発行における代替RFRの使用に関する業界の取り組みに参加し、動向を見守ります。こうした取り組みには以下のようなものがあります。

新規案件

1. 利息計算の慣行

2. フォワードルッキングのターム物金利

3. フォールバックの規定(IBORを参照する契約でRFRを使用する)

レガシー取引

1. RFRとIBORが同基準となるような信用スプレッドの調整(すなわち、調整幅、通常はベーシスポイントを単位として使用)。国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)は2021年3月5日時点で、一定の手法に基づいたスプレッドを公表しています。このスプレッドはスワップ契約に適用することができ、発行体が現物商品の移行に用いる指標になります。

2. IBORを織り込んだ契約の変更に使用する法的文言の標準化

3. IBORを織り込んだ契約にフォールバック条項(IBORが公開されなくなったときに適用)を織り込む際に使用する法的文言の標準化

4. 修正が容易ではなく、代替的な解決策(時には法的要素を含め)を必要とするタフレガシー案件の解決策。

詳細については、付録Bをご参照ください。

M&Gは、市場イニシアチブに加え、特定の基準を満たす米ドルLIBOR契約に自動的にフォールバックを適用する米国の法案にも注目しています。M&Gの投資チームは、このような法案を通じたフォールバックの適用可能性に関する評価を検討材料とし、残るIBOR参照銘柄を削減または移行するアプローチに反映しています。

その他

市場関係者による取り組みはどのように管理されているか。また、M&Gはどのような役割を果たしているか


英ポンド建て資産に関する市場関係者の取り組みは、『英ポンド・リスクフリー・リファレンス・レートに関するワーキンググループ(RFRWG)』が担当しています。このワーキンググループは、移行を円滑に行うことを目的にイングランド銀行によって設立され、その業務は関連レポートを公表することと、市場参加者に対する推奨案の作成です。イングランド銀行は職権上のメンバーにすぎず、議長は民間機関から選出され、出席者も民間機関が中心となっています。

RFRWGには26の民間機関が参加しており、そのうちM&Gを含む5社が資産運用会社です。また、M&Gは、5つのサブグループのうち2つで共同議長役を務めています。RFRWGは、2021年末に目標の大部分を達成しました。

業界はどのように他国との調整を図ってきたか

規制当局、特にイングランド銀行と米連邦準備制度理事会(FRB)は、IBOR移行プロセスで明らかになった問題に対する解決策の策定において緊密に取り組んでいます。『代替参照金利委員会(ARRC)』lは、RFRWGと同様の役割を担う米国の組織です。ARRCが開催する会議には、RFRWGの代表者が出席し、2国の足並みを揃える(またはあえて違える)ために、RFRWGの代表は英国市場における取り組みの最新情報を発表します。その逆もまた然りです。

投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。