不動産
10 分間で理解する 24年12月24日
世界的にほとんどの国で不動産市況が転換点に達し、物件価値が概ね安定したことや、一部地域では回復局面入りしたとみられていることから、不動産投資への関心が高まっています。また、市場が新たなサイクルに突入する中、手頃な物件価格と需要回復の強まりにより、魅力的なリターンが得られる可能性が高まっています。
不動産セクターには、供給面の制約や需要増加に支えられた構造的な追風を活用できる好機が訪れています。しかしながら、回復のペースは一律でないことが予想されるため、適切な物件やロケーションを選別することが超過収益の鍵となりそうです。
米国大統領選挙の結果を受けて、利下げの幅や期間に関する不透明感が増しているため、賃料の成長余地がより大きい物件への投資が一段と重要になっています。また、物件価格が比較的まだ手頃なサイクル初期段階で、脆弱な物件からより優良な物件へと入替えを図ることが良策と考えられ、これにより、価格回復の進展に伴う追加的なリターンも得られると予想しています。
2025年に向け不動産市場に対する楽観的な見通しが強まるなか、近年で最も魅力的な収益機会となり得る、足下の上昇局面を捉えることが重要だとM&Gは考えます。
過去2年間、不動産市場は、セクターや地域を問わず厳しい調整を経験しました。しかし足下では、下げ幅が大きかった物件でさえ、価格が概ね安定しており、新たなサイクルが始まることへの期待感が高まっています。痛みの後には常に回復が訪れ、新たなサイクルの始まりがもたらす機会に楽観的なムードさえ芽生えてきているようです。
価格調整を経て物件価格が割安となっている現状、不動産投資の妙味はこれまで以上に高まっています。M&Gは今後5年間は、不動産市場が過去10年間で経験した最高のパフォーマンスに近づく可能性が大きいと考えています。その要因としては、高いインカム・リターンに加え、需要回復に対して供給がひっ迫しているため、賃料成長の加速が見込まれることなどが挙げられます。
物件毎にパフォーマンスの開きが予想されるものの、不動産投資に対して楽観的な見方が強まり、リスク回避姿勢が後退すれば、人気が集中する物件については投資利回りの低下が再び顕著となり、パフォーマンスが押し上げられる可能性が高いとみています。特に人気の高まる、いわゆる「ベッズ&シェッズ(住宅と物流施設の複合物件)」セクターや、小売やオフィスセクターなどでも、コア資産が今回のサイクル初期段階で恩恵を受ける最有力候補と予想しています。
一部の投資家にとっては、リスクと期待リターンがより高めの物件を検討するのに適したタイミングとも言えます。市場の回復が強まるなか、構造的な問題や大幅な価格調整により割安感が強まっている物件へ投資を振り向けることにより、市場平均を上回るアルファの獲得が期待されます。
市場の回復が明確化するなか、サイクルの上昇局面を捉え、賃料成長の恩恵を受ける物件へ投資を行う好機が訪れています。しかし、この回復は、全ての物件に当てはまる訳ではありません。
我々は、「K字型の回復」を予想しています。つまり、多くの物件の価格が回復を続けるとみられる反面、一部の物件については、今後も価格が下落する可能性があると考えています。分かり易い例としてオフィスセクターが挙げられます。上位のオフィス物件は高パフォーマンスが継続し、かつ価格上昇が予想される一方で、老朽化のリスクが高く競争力が弱い下位の物件は、価格下落傾向から逃れられないでしょう。
また、次のサイクルでは立地も重要な要因になると思われます。特に小売やオフィスなどのセクターでは、入居者の需要がますます限定的になるなか、立地が鍵を握るでしょう。
他方、融資の借換え確保に苦戦する可能性のある物件はディストレス化する可能性があり、価格の低迷も長引く恐れがあります。しかしながら、こうした物件へ安価な水準で投資することが可能な投資家にとっては、これも投資の好機となる可能性があります。
同様に、価格下落リスクがより高い物件については、資本構造上の別の側面である不動産デットへ投資することで、リスクの軽減化が可能と考えられます。
「ブラウン・トゥ・グリーン戦略(持続可能性をより意識した物件への転換)」を推し進めることができる投資家は、物件の資産価値を抜本的に改善し、K字型回復の「下落側」から「上昇側」に移行させることも可能と考えられます。特に好立地の物件は、そのポテンシャルが大きいと考えられます。
ただし、たとえ回復力があるタイプの物件を選んだとしても、物件の管理や運営方法がパフォーマンスを大きく左右することは言うまでもありません。テナントの変化するニーズを理解し、例えば、技術革新などの運営上のリスクに敏感であることが重要なことは言うまでもありません。
先進国では、インフレ率が最近のピークから劇的に低下した一方で、住宅コストは今後も高い上昇率が続く可能性が強いとみられます。
賃金が上昇しているにも拘わらず、多くの住宅市場では、構造的な要因を背景に住宅価格がますます手の届かない水準となっています。
家賃の上昇率が高い伸びを記録している背景には、コロナ後の市場の混乱も一因としてあるものの、先進諸国において構造的な需給の不均衡が解消されないことがより大きく影響しています。主要な都市部では、国内外からの流入により人口の堅調な増加が続いており、住宅需要は引き続き高い伸びを示すとみられます。
一方、住宅供給のペースは、市場の不透明感が強く、かつ高い借入れコストや建築コストが住宅建築を圧迫した時期を経て、高まる需要に追い付けない状態が続いています。しかし、これは長期的な問題であり、先進国政府が掲げる野心的な新規住宅建設の目標は、資金不足を理由に、これまで滅多に達成されることはありませんでした。特に、手頃な価格帯の住宅開発は実現が最も困難であり、結果的に低所得世帯が最も大きな影響を受けることとなり、住宅の取得が困難になっています。
機関投資家にとっては、手の届く価格帯の住宅供給計画に資金を拠出することで、差し迫った社会的ニーズに応える、絶好の機会がもたらされています。
持ち家、あるいは賃貸の両方の形態において住宅供給を増やすことは、家計の負担を軽減し、世界の主要都市の住みやすさを向上させるために不可欠です。
投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。
本項に記載されている内容は現時点におけるM&Gの見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではなく、また将来の状況やパフォーマンスを予測するものではありません。
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