プライベート・マーケット
5 分間で理解する 25年8月14日
2025年上半期は、波乱含みの展開が続きました。ドナルド・トランプ米大統領が関税を発表した直後、上場株式市場は約10%下落し、その後急速に回復しました。関税の最終的な影響が不透明な中、ボラティリティは高止まりしました。しかし、市場で様々なノイズが飛び交ったにもかかわらず、欧州ローン市場は相対的に安全な避難先として資金が流入しました。以降では、2025年上半期の主要な出来事とそれが欧州ローン市場に与えた影響を振り返り、今後の見通しを考察します。
2025年は上半期は、毎週のように市場に新たな難題が舞い込んできたかのようにさえ感じられました。欧州ローン市場に影響を与えた主要なテーマとしては以下の3つが挙げられるでしょう。
4月初旬、トランプ大統領はSNSを通じて、米国に対して不公平な関税が課されているとし、それに対抗する大規模な報復関税を発表しました。対象国は約90か国に及び、世界市場は混乱に陥りました。米国株式の1日の下落率としては、第二次世界大戦以降で最大級となり、米国30年債の利回りも一時5%を超え、投資家の不安が顕著に表れました。
しかし、このような状況下でもシンジケートローン市場は底堅く推移し、4月の下落率はわずか-0.28%にとどまりました。堅調な経済指標、インフレ率の改善、貿易摩擦の一時的な沈静化により、市場は急速に回復しました。第1四半期(1-3月)末には、米国株式は11%上昇し、欧州株式も1.4%の堅実な上昇を記録しました。
2025年上半期のM&A(合併・買収)活動は、前半と後半で大きく様相が異なりました。第1四半期(1-3月)は「解放の日」の関税発表による不確実性が影響し、M&Aの勢いが鈍化しました。市場の不安定さにより、買い手と売り手の評価ギャップが広がり、新規M&Aは停滞しました。ローン発行は、リファイナンスやリプライスが中心となり、従来型のレバレッジド・バイアウト(LBO)は停滞しました。
しかし、第2四半期(4-6月)末には状況が一変しました。第2四半期は、新規発行が活発化し、その約半分がM&AやLBO関連の資金調達によるものでした。発表されたM&Aの取引量は前年比30%増加し、プライベート・エクイティの「スイートスポット」である2~5億ユーロ規模の案件は50%増加しました。今後の見通しとしては、市場のボラティリティが落ち着きつつある中で、案件パイプラインの再構築と投資家心理の回復が期待されます。
表面的なデフォルト率は低水準を維持しているものの、クレジット市場にストレスの兆候が徐々に現れ始めています。第2四半期(4-6月)初頭、格付け会社フィッチ・レーティングスは欧州ローンのデフォルト予測を50ベーシスポイント引き上げ、2025年の予測を2.5~3.0%としました。これは、欧州の実際のデフォルト率が0.71%、米国が1.11%であるにもかかわらずです。
しかし、表面下では亀裂が見え始めています。Altice FranceやLowellといった著名な発行体が長年の問題の解決に向けて債務再編に入り、債務の一部放棄を伴うプロセスが進行しています。さらに、米国でのLME(ライアビリティ・マネジメント・エクササイズ)の利用増加や、ダイレク・トレンディングにおけるPIK(ペイメント・イン・カインド)型金融商品の活用は、信用圧力の高まりを示唆しています。
バンク・オブ・アメリカの試算によると、LMEを含めた実質的な米国のデフォルト率は3.6%で、報道されているデータの約4倍に達します。これは、米国と欧州のリスク調整後スプレッドの乖離を示す一例であり、景気サイクルが成熟する中で、クレジットモニタリングの重要性が高まっていることを示しています。
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