株式
5 分間で理解する 24年10月11日
シェーン・ケリー
ファンド・マネジャー
グローバル・ストラテジック・バリュー
ドナルド・トランプ前米大統領に対する2度の暗殺未遂事件、2024年米国大統領選における民主党候補の突然の交代劇、そして日本株式の短期間での急激な下落により、今夏のマーケットは夏枯れどころか激動の夏となりました。さらにその後には、米連邦準備制度理事会(FRB)の50ベーシスポイントの利下げ発表と、中国のより積極的な景気刺激策によるサプライズが続きました。
弱い消費から生まれる意外な勝者 :
直近の米国決算シーズンの主要テーマは、消費者、特に低所得者層における消費の減速でした。
各企業がこうした逆風をどのように乗り切ったかについては、興味深い相違点が見られました。ダラー・ツリーやダラー・ジェネラルといったディスカウント小売業者の株価は、通常、厳しい経済環境下で恩恵を受ける側にいますが、当期は期待外れの決算を発表した後に急落しました。対照的に、ウォルマートは予想を上回る好業績に支えられ、市場をアウトパフォームしました。
ウォルマートの真の強みは、その堅固なバランスシートにあります。このバランスシートのおかげで、同社は過去数年間、厳しい事業環境に直面しながらも投資を継続し、ビジネスモデルの見直しを進めることができました。しかし、1ドルショップの様なディスカウント小売業者など、負債を抱える競合他社には、そうした余裕はありません。これは米国だけの現象ではありません。英国でも同様の現象が起きています。例えば、テスコは、多額の負債を抱えプライベートエクイティに所有されているライバル企業に比べ、業績を伸ばしています。
これは市場全体の動向を見るだけでは、勝者を選ぶには不十分だということを意味していると、M&Gは考えています。個々の企業やその企業固有の状況を吟味し、より選別的なアプローチを取る必要があるのです。
再び群れに加わるのか?
メガキャップのテクノロジー企業の業績は、当四半期もポジティブサプライズが続きましたが、サプライズの度合いそのものは、小さくなりました。
突出した業績サプライズがなかったことに加え、不確実性が高まり、かつバリュエーションのばらつきが拡大したことを背景に、当期はスタイルおよびファクターのローテーションに適した環境となりました。特に米国では、債券利回りが大幅に低下したにもかかわらず、バリューがグロースを上回る結果となりました1 。
ジョージ・ソロスはかつて、「短期的なボラティリティは転換点で最大になる」と述べましたが、マクロ経済や政治的要因がこれほど多く勢ぞろいしている現在、私たちはまさにそういった転換点の一つに差し掛かっているのかもしれません。
米国では、両大統領候補の政策の詳細はまだ明らかになっていませんが、税制や規制に関しては明確な違いがあり、これが様々なセクターや銘柄に大きな影響を与える可能性があります。さらに、選挙戦は接戦が続いており、これが年末に向けた不確実性を一段と高めています。
ボラティリティが急上昇すると、分散投資のメリットを説く声をよく耳にします。十分に分散されたポートフォリオが不確実性を乗り越える上で重要な要素であることに異論はありませんが、M&Gはそれをパズルのピースの一つに過ぎないと考えています。ボラティリティから恩恵を受けるには、分散だけでは不十分です。
同様に重要なのは、柔軟性を保つことです。世界は予測不可能で、サプライズに満ちており、固定観念を持つことにメリットはほとんどないと考えられます。事前に結果を予測し、その影響を推計しようとするのは無駄な作業です。もう1つの不可欠な要素は、事前の備えです。出来事を予測するのが難しいのと同様に、その影響がどの程度続くかを知ることも困難です。私たちは、機会が訪れた際に投資を行うために必要な知識を蓄えるという、ボトムアップ・アプローチが鍵であると考えています。
ボラティリティはアクティブ投資家にとって絶好のチャンスです。年初からの金利予想の絶え間ない変化と、日本株式の急激かつ短期的な下落は、M&Gのグローバル株式ポートフォリオへ新たな日本株式のポジションを追加する好機をもたらしました。一方、M&Gの欧州株式ポートフォリオについては、金利低下により欧州の銀行が苦戦を強いられるという「一般的な見通し」に反した投資方針を引き続き維持しています。当四半期は、足下の株価下落が合理性に欠ける点や、短期金利低下による収益への悪影響が限定的であることを考慮し、北欧の銀行への投資を通して銀行セクターへの配分増加を図りました。
投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。
本項に記載されている内容は現時点におけるM&Gの見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではなく、また将来の状況やパフォーマンスを予測するものではありません。
当資料は、一般的な情報提供を目的としており、金融商品取引業登録に基づく業務又は当社関連会社が組成するファンドの持分等の勧誘を目的としたものではありません。