株式
4 分間で理解する 25年1月29日
2024年、欧州株式市場では、再びバリュー株式が良好なパフォーマンスとなりました。政治リスク、成長性への懸念、刻々と変わる金利動向の行方など、相場の変動要因が多かったにもかかわらず、バリュー株式が欧州株式およびグロース株式をアウトパフォームしました。
一般的にバリュー株式は、利下げ局面では苦戦する傾向が強いと考えられているため、こうした展開は大方の予想に反するものでした。欧州中央銀行(ECB)は、昨年中に4回の利下げを行いましたが、当初予想されていたよりも利下げの回数が少なかったことが、バリュー株式にとってむしろ追い風になったと考えられます。
2024 年の堅調なパフォーマンスは、バリュー投資の地合が、近年改善してきていることを改めて示すものでした。過去3年間で、バリュー株式はグロース株式を大幅にアウトパフォームしており、欧州バリュー株式の魅力が衰退するどころか、健在かつ顕著であると考えています。
バリュー投資に対する一般的な見方は、米国株式、中でも特にテクノロジー銘柄が支配的な地位を占め続ける米国グロース株式によって形成されていると言えるでしょう。しかし、欧州は米国とは異なる特徴を持っており、バリュー投資において、より有利な側面を持っている可能性があります。
欧州には、いわゆる「マグニフィセント・セブン(マグ7)」に匹敵するような超大型ハイテク銘柄はありませんが、「GRANOLAS1」として知られる独自の大型グロース銘柄群があります。ハイテク企業に偏った「マグ7」とは異なり、「GRANOLAS」には、高級品ブランド、テクノロジー、ヘルスケアなど様々なセクターの著名企業が含まれています。欧州におけるバリュー対グロースを語る上で、この様な市場構成の特徴は、欧州独自の市場力学が働くことを示しています。
2024年に欧州市場でバリュー株式がアウトパフォームする中、銀行セクターが予想外の勝ち組として浮上しました。特筆すべきことに、欧州銀行株の上昇率はテクノロジーがけん引するナスダック指数をも上回り、厳しい事業環境における同セクターの回復力と適応力に対する市場の信頼を反映した結果となりました。利下げ局面にあったことを考えると、この展開は予想外に思えるかもしれませんが、市場は金利低下が銀行のビジネスに与える悪影響を過大に織り込み過ぎていたと我々はみています。
2024年の初めには、多くのセルサイドアナリストが銀行セクターに逆風が吹くと予測していました。しかし我々は、欧州の銀行が近年大きな進化を遂げており、かつ株式のバリュエーションも魅力的な水準にあるとみていました。現在、欧州の銀行は十分な自己資本を持ち、バランスシートも健全で、地域内での統合を進めたことで、競争力が高まっています。
我々の分析では、銀行は利下げ局面が近づいていることを強く認識し、これに備えていました。それに加え、近い将来再びゼロ金利時代に戻ることは想定しづらいため、銀行の収益性が急激に悪化する可能性は低いと考えます。
実際には、金利は投資家の予想よりも大幅に高い水準で推移し、利下げのペースも予想よりゆっくりと進んでいます。このような環境が、銀行に利下げへの準備と適応の猶予を与えました。さらに、銀行は堅調な消費支出と底堅い純利息マージンからも恩恵を受けています。これは、特に英国において顕著です。我々は、銀行セクターに対する市場のネガティブな見方を今後も覆していくとみています。
我々は、欧州バリュー株式には過去10年間のアンダーパフォーム分を取り戻すほどの更なる上昇余地があると予想しており、バリュー株式への投資機会は今後も続くとみています。例えば、欧州株式市場のバリュエーションは米国と比較して大幅に割安であり、あらゆるセクターにおいて欧州株式が米国よりも割安な水準で取引されています。
バリュー投資家にとって、現在の投資環境は非常に魅力的だと考えます。投資機会は特定のセクターや地域に限定されず、広く市場全体にわたっています。様々な国やセクターにバリュー銘柄が存在し、米国株式に比べて大幅に割安な水準にある多様な銘柄でポートフォリオを構築することができます。我々は、このように極端なバリュエーションが、希有な投資機会をもたらしているとみています。
米国経済は欧州より底堅いかもしれませんが、それだけで両地域の大きなバリュエーション・ギャップを正当化できるとは思えません。
米国にはAI革命を推進する先端的のハイテク企業が多数存在し、米国企業は低価格のエネルギーの恩恵も受けていますが、事業環境が欧州よりもはるかに優れているとは言い切れないでしょう。米国も巨額の財政赤字や債務の増大懸念といった独自の課題に直面しています。特に欧州の銀行は、米国の銀行に比べてはるかに魅力的に見えます。
米国による欧州企業に対する関税政策の影響についても懸念はあるものの、両地域を比較すると、欧州の見通しは懸念されているほど悪くはなく、やはり現状の割安水準は正当化できるものではないと考えます。
バリュー投資は低迷しているという一般的な認識とは裏腹に、実際には欧州やその他の地域で、バリュー銘柄は堅調に推移しています。これまで見てきた通り、投資環境は、安定したゼロ金利の時代から、より不安定で予測不能な環境へと移行したように思われます。新たな局面に入り、投資家が過去10年の間慣れ親しんだものとは異なるセクターや銘柄が市場をけん引しつつあります。
我々は、この投資環境の変化こそ、バリュー投資が成果を出し続けるための追い風になると考えています。グロース銘柄の極端に割高なバリュエーションはファンダメンタルズに見合うものではなく、より割安な銘柄へのシフトを促す可能性があるとみています。
とは言え、市場とマクロ経済の両方に多くの不確実性があることも否定できません。スタイル選好や市場のけん引役は、センチメントやマクロ見通しに応じて変化し、相場の方向性を変える出来事やトレンドが生まれれば、バリュー投資に逆風となる可能性も十分にありえます。
それでも、我々はバリュー投資の長期的な見通しについては楽観的です。投資環境の変化以降、欧州のバリュー株式は力強さを増していることを、多くの投資家はまだ認識していません。特に、米国株式に比べて大幅に割安な水準にあることを踏まえれば、欧州バリュー株式には肥沃な大地が広がっていると言えるでしょう。
今こそ、欧州バリュー株式の復活に目を向けるべきです。極端に割安なバリュエーションは、十数年ぶりの投資機会となる可能性があります。とはいえ、バリュー株式は長年にわたり見過ごされてきたため、バリュー株式の投資機会が認知されるまでには時間がかかるでしょう。バリュー株式の投資機会は広範囲に広がっています。そして、忍耐強く、選別眼のある投資家に、大きな投資機会を提示すると考えます。
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