株式およびマルチアセット ‘26年第2四半期見通し

20 分間で理解する 26年4月16日

市場見通しのシナリオを読み解く:事実もしくは一過性?

「2026年第2四半期 株式・マルチアセット見通し」では、株式&マルチアセット・サステナビリティ投資CIOのファビアナ・フェデリと運用チームが、刻々と変化する市場のシナリオをどのように見極め、どのようなアクションを取ったのかをご紹介するとともに、注目している投資機会についても取り上げます。

  • ここ1年間、市場シナリオは、目まぐるしく変化しています。これらは時にそれなりの説得力がありますが、すべてが実態に基づいているわけではありません。日々変わるニュースをポートフォリオ運用の判断に用いることは、賢明とは言えません。運用者としての役割は、事実と一過性の現象との境界線を見極めることです。
  • 私たちはマクロ経済の行方に任せるのではなく、銘柄選択、リスク分散、そして市場に何が織り込まれているのかを正しく理解することに注力しています。そして、バリュエーションが足元の事実、過去の文脈、そして中期的に想定し得る結果と比べて妥当かどうかを検証しています。
  • 株式では、「AI敗者」と見なされている一部の銘柄に投資機会を見出しています。それらの多くは、AIによって悪影響を受けるというよりも恩恵を受ける可能性が高いと考えているためです。一方で、エネルギーおよびメモリー関連のポジションは削減しました。マルチアセットでは、英5年物国債を買い持ちしています。
  • エネルギー安全保障や低炭素エコシステム、インフラ、イノベーションといった長期的なテーマに対しては、引き続きポジティブな見方を維持しています。これらはいずれも、今後も資本が流入し続ける分野であり、足元の地政学的イベントによって、その重要性は一段と高まっています。

ファビアナ・フェデリ
CIO、株式&マルチアセット・サステナビリティ投資

説得力のある市場シナリオが実態に基づくとは限らない

「昔はね……」。最近よく、自分が祖母のような口調になってきていると感じます。とはいえ、私(そして祖母)の名誉のために言えば、市場は実際に進化を遂げました。過去1年間で、市場のシナリオは刻々と変わり、変化のスピードはとどまるところを知りません。情報の流通速度と浸透度が極めて高まったことで、市場シナリオには説得力があるものの、非常に移ろいやすいものになっています。

この1年間だけを見ても、関税、利下げ、「Saasの死」、イラン紛争の悲惨な映像、そしてその合間にいくつものシナリオが次々と登場しました。これらのシナリオは、その時々では非常に説得力があることもありますが、すべてが等しく実態に基づいているわけではありません。運用者としての私たちの役割は、事実と一過性の現象との境界線がどこかを見極めることです。市場の反応能力もまた飛躍的に高まっており、紛争が始まる前から市場の値動きのスピードや広がりは以前にも増して大きくなっていました。

かつては、市場の大きな変動はファンダメンタルズに問題が生じている兆候と捉えられていました。ところが現在では、取引に関与するテクノロジーやクオンツ戦略の規模が非常に大きくなった結果、単なる短期的な動きに過ぎない場合もあります。これにより、シグナルとノイズを見分けることはいっそう難しくなっています。地政学は短期的なボラティリティをもたらすかもしれませんが、リスク資産への持続的な影響は、企業収益や信用環境が広範に影響を受けた場合にのみもたらされる、ということを私たちはよくお客様にお話しします。ホルムズ海峡の閉鎖が長期化し、エネルギー施設への損害が拡大すれば、戦争終結後もエネルギー価格は長期にわたり高止まりするでしょう。それが市場の行方にも影響を与え得るのです。

現時点では、いくつかの短期的な局面を除けば、株式市場は比較的落ち着いており、通貨も過去の想定ほどは米ドルに対して下落していません。執筆時点では、MSCIワールド指数はイラン紛争開始以来8%下落し、年初来では6%の下落しています。しかし、英国、韓国、日本、ブラジルといった一部の市場は年初来でプラスのリターンとなっています1。国債利回りのボラティリティは高まり、クレジットスプレッドも拡大していますが、そのうちどの程度がエネルギー価格への懸念によるもので、どの程度がプライベートクレジット問題によるものなのかを判断するのは容易ではありません。

これらの市場の動きは、私たちがすでに気づき始めていたことを改めて浮き彫りにしました。すなわち、「経験則」、特にリスク認識や安全資産といったリスク回避に関するものは、もはや過去のように機能していないということです。過去の類似状況と比べると市場は想定以上に落ち着いています。米ドルは上昇しているものの、従来のような「安全資産への逃避」といった水準ではありません。また、先進国国債利回りは上昇し、金価格は下落しています。投資家がパニックに陥っているようには見えないものの、油断は禁物です。この紛争がいつ、そしてエネルギー価格への影響がいつ収束するのか、私たちには分かりません。停戦協議が停滞し不確実性が長引く可能性はありますが、早期解決シナリオの可能性も排除できません。

すでに「織り込まれているもの」を見極める

短期的な市場取引は容易ではありません。日々変わるニュースを追いかけることが、ポートフォリオ運用に深刻な悪影響を及ぼすこともあります。また、マクロ経済の方向性を見通すことが難しい環境下では、景気や金利の動きを予測して市場全体の方向性に賭ける取引は、ほぼ不可能です。

私たちのアプローチは異なります。まず「市場で何がすでに織り込まれているのか」に注目し、事実、過去の文脈、そして妥当と考えられる中期的なシナリオと比べて、バリュエーションが合理的かどうかを検証します。資産ごとにリスク・リターンの特性は異なるため、私たちは銘柄選択を重視しています。私たちは、単一のマクロトレンドを追ってポートフォリオ全体を転換することはしません。ファンダメンタルズを重視した慎重な銘柄選択と、十分に分散が効いていることこそが、耐性の高いポートフォリオを構築する最善の方法だと考えています。たとえば現状では、短期的な原油価格の行方を予想することでポジションを取ることは避けています。確固たる「和平」が成立すればエネルギー価格は下落すると思われますが、逆に紛争が長引けばエネルギー施設への被害はより広範に及び、損害も大きくなる可能性が高いためです。

シニア・エネルギー・アナリストのニール・ミラーは、中東のエネルギーインフラの全体像の把握は難しいものの、製油所、石油化学およびガス施設で確認されている被害の規模を踏まえると、最も楽観的なシナリオ(すなわちホルムズ海峡が近いうちに再開された場合)でも、ブレント原油価格は2026年を通じて1バレル80米ドルを上回る可能性が高いと指摘しています。石油製品はさらに影響を受けやすく、ジェット燃料や軽油の価格は、原油価格に比べて相対的に高止まりする可能性があります。ガス供給は原油以上に影響を受けやすく、カタール産LNGが海峡を通過できない期間が長引くほどガス価格は紛争前の水準を上回り続け、2022年に見られたような価格急騰が再発するリスクも高まります。こうした状況を踏まえ、エネルギー価格変動に対するポートフォリオの耐性が十分かどうかを再点検しました。

株式: 「AI敗者」がもたらす投資機会

紛争やエネルギー価格への懸念はあるものの、株式市場には引き続き投資機会があると考えています。このような局面こそが、恐怖や過信、画一的なポジションによる価格の歪みを生み、最も魅力的な投資機会が生まれることが多いためです。私たちは、「SaaSの死」と呼ばれる状況に巻き込まれている一部の企業はAIによって置き換えられるのではなく、むしろ強化される可能性が高いと考えており、テクノロジー分野で保有銘柄を入れ替えました。具体的には、米国およびアジアのメモリー関連銘柄の比率を引き下げることでポジションを調整しました。DRAMメーカーの収益性が大きく改善する「メモリー・スーパーサイクル」が進行していると考えていますが、その強さはすでに相当程度織り込まれているように感じられます。

AIによって事業モデルが大きく破壊されるとの見通しから、売りたたかれた「AI敗者」の中には有望な投資機会を提示しているものがあり、それらはテクノロジーセクターに留まらないと考えています。例えば生活必需品セクターは、2月に株価が上昇した後、原油価格上昇によるコスト増と消費者購買力への懸念から反落しました。

足元の相場は、変化する市場シナリオに左右されてきたものの、消費者を取り巻く環境は、引き続き複数の持続的かつ長期的なトレンドによって形成されていると考えています。消費はモノからコトへと着実にシフトしており、レジャーや旅行関連企業が恩恵を受けています。消費者がコストパフォーマンスと利便性を重視する傾向はますます強まっており、健康やウェルネスも購買決定に引き続き影響を与えています。

すべての企業がこうした構造変化の恩恵を受けるわけではありません。実際、多くの企業は事業環境の悪化に直面するでしょう。しかし歴史が示すように、ボラティリティの高い局面は、環境変化に適応できる優良企業への魅力的な投資機会を生み出します。

ネクストやウォルマートといった既存小売業者の変遷は、こうした変化を示す典型的な例です。10年前、オンラインショッピングに買い物客が流れる中、大規模な店舗網を持つリテールビジネスは不利とみなされ、いわゆる「リテール・アポカリプス(小売りの死)」の犠牲者と見なされていました。しかし現在では、これらの店舗網は、在庫処理、迅速な配送、より効率的な返品対応を支える戦略的資産として、評価が高まりつつあります。この10年間でネクストとウォールマートの株価はそれぞれ約240%、580%上昇しており、勝者を見極めることの重要性を物語っています2。最近売り込まれた生活必需品銘柄の中にも、明日の勝者が存在するかもしれません。

私たちはまた、エネルギーなど紛争に強く反応した分野で一部利益確定を行い、キャッシュ保有率を引き上げ、過度に売られた局面が訪れた際に再投資する準備を整えています。

マルチアセット:国債の投資機会

3月の先進国国債の売りは、2022年の記憶が強く影響した「直近バイアス」によるものと見られます。中央銀行が同じ轍を踏み、利上げを選択する可能性はありますが、現在の金融・マクロ環境は2022年とは大きく異なります。第一に、欧州、英国、米国では政策金利は中立から引き締め寄りの水準からスタートしていますが、2022年初頭は極めて緩和的でした。第二に、パンデミック後のインフレには複数の要因がありましたが、政府刺激策や積み上がった貯蓄といった需要による要因が大きかったと言えます3

一方、最近の原油価格上昇は供給ショックによるものであり、関連製品の値上がりが消費マインドを冷やす可能性があります。そのため中央銀行は、インフレと景気減速のどちらにも目配りしながら慎重な対応を余儀なくされるでしょう。労働市場が弱い中での利上げは、インフレ抑制につながらないまま、経済に大きなダメージを与える恐れがあります。

市場が急速に利下げから利上げを織り込み始めたため、私たちは今回の国債売りを様々なシナリオにおいて魅力的な投資機会と捉えました。特に英国はその傾向が顕著で、英国債は先進国国債の中で最もパフォーマンスが低迷しています。2022年の大規模なエネルギー補助の記憶から、エネルギー価格上昇への対応として政府借入が再び増加するのではないかという懸念が強まっているためです。しかし利回りの急上昇は、考え得る金融・財政シナリオ以上の悲観を織り込んでいるように見えました。そのため、私たちは戦術的戦略配分として英5年物国債を買い持ちしました。また、新興国現地通貨建て債券の利回り上昇を受け、中期的なバリュエーション面で魅力的だったポジションをさらに積み増しました。

マルチアセット戦略全体では、複数のリターンドライバー、資産クラス、地域にわたる分散を引き続き強化しています。

長期的なレジリエンスを支える構造テーマ

私たちは引き続き、エネルギー安全保障、低炭素エコシステム、インフラ、そしてイノベーション(テクノロジーに限らずヘルスケア分野も含む)といった長期テーマを有望視しています。これらは今後も必然的に資本が流入し続ける分野だとみています。エネルギー安全保障は、投資家、企業、国家のいずれにとっても再び最優先課題の一つになり、世界的にエネルギー関連インフラの耐性の優先度が高まるでしょう。

今回の中東紛争は化石燃料への経済的依存を浮き彫りにし、地域的混乱が世界経済に大きな影響を及ぼし得ることを露呈しました。長期的には、各国はエネルギー供給の多様化を進め、価格・供給の安定性と環境面の利点から再生可能エネルギーへの投資を拡大するでしょう。もっとも、アジア太平洋株式運用部門 共同ヘッドのカール・ヴァインが述べているように、世界的な成長見通しが下方修正されれば、構造的に息の長いテーマであっても短期的な逆風を免れない可能性があります。これは明確なリスクであり、私たちも警戒しています。しかし歴史は、市場の出入りをタイミングよく図ろうとするよりも、投資を継続することで得られる複利効果の方が、長期的には優れたリターンをもたらす可能性が高いことを語っています。詳細は、「株式およびマルチアセット’26年第1四半期見通し」をご覧ください。

以降では、各運用チームがそれぞれの投資領域において、変化し続ける市場シナリオにどう向き合い、どのような行動を取り、どのような投資機会を見出しているのかをご紹介します。アジア太平洋株式運用部門 共同ヘッドのデイブ・ペレットが述べているように、私たちは市場シナリオの影響力を意識しながらも、それに振り回されない姿勢を重視しています。市場シナリオは構造的な変化を見つける助けになりますが、何が相場に織り込み済みで、現在のバリュエーションが現状や中期見通しと整合的かどうかといった検証は必須です。

私たちは、5年先の将来を正確に予想するよりも、高い確度で見極められる事柄と、推測の域を出ない事柄を切り分け、事実とバリュエーションの観点からなお優位性があると判断できる分野に資本を配分するよう努めています。それにより一過性の流行に翻弄されることなく、マーケットで戦える確度が高まるためです。また、英国株式運用ヘッドのマイケル・スティアズニーは、「事実と流行りを見極めるのは容易ではないが、市場シナリオの変化はアクティブ運用者にとって新たな機会を生み出し得る」と述べています。

本レポートが、皆様にとって有意義で、そして興味深いものとなれば幸いです。

1 出所:Bloomberg、2026年4月9日。米ドル建てトータルリターン。
2 出所:Bloomberg、2026年3月9日。現地通貨建てトータルリターン。
3 Hajdini, Ina, Adam Shapiro, A. Lee Smith, and Daniel Villar (2025). “Inflation since the Pandemic: Lessons and Challenges,” Finance and Economics Discussion Series 2025-070.

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