株式およびマルチアセット ‘26年第1四半期見通し

20 分間で理解する 26年1月15日

二極化:熱狂と戸惑い

  • 足もとの地政学的および経済的な状況を背景に、投資家が熱狂と戸惑いの狭間で揺れ動く中、市場はますます二極化している。
  • 世界的に見ると、2025年の最大の敗者はクオリティ株であり、先進国市場において過去20年超で相対的に最大の下落を記録した。
  • こうした一見極端に振れる投資行動の結果、熱狂と戸惑いに惑わされずに市場を見据える投資家には依然として投資機会が残されている。
  • M&Gは、市場がクオリティ株を敬遠している状況を好機と捉え活用してきた。2026年はAI関連の投資機会がさらに広がり、豊富な資本を背景にAIの進展から恩恵を受ける企業が一段と増えるだろう。

ファビアナ・フェデリ
CIO、株式&マルチアセット・サステナビリティ投資

熱狂と戸惑いの狭間でアルファを獲得する

市場はますます二極化しつつあります。投資家は市場の一部に殺到する一方で、その他においては同様の確信をもって、切り捨てているようにさえ見えます。

2025年の米国株市場は、グロース株とバリュー株のバリュエーション・ギャップが過去数十年間で最も広がった年となりました。一方で、バリュー株は他の地域、特に欧州や英国などでは、好パフォーマンスをあげました。世界全体で見ると、2025年の真の敗者はクオリティ株でした。高い資本収益率や長期的なディフェンシブ特性を持つクオリティ銘柄は、先進国市場において過去20年超で最も大きな相対的下落に見舞われました¹。これらの銘柄の中には、関税、政策、「テック敗者」などのノイズに巻き込まれたものもあり、懸念の多くは根拠のない憶測でした。他方で、2025年に最も好調だった二つの市場のひとつは新興国株式(+34%)で、韓国のKOSPIは米ドル建てのトータルリターンで+83%もの上昇を記録しました。また、金も+65% と大きく上昇しました。まさに「熱狂組」と「戸惑い組」のアニマルスピリットがぶつかり合った一年だったと言えるでしょう。

「熱狂組」と「戸惑い組」は、ともに好成績を収め、最終的には引き分けと言えるかもしれませんが、その展開は手に汗握るものでした。過去のレポートで市場変動の速度が高まっていることを述べましたが、急激で大きな値動き(多くは「いってこい」の展開)が新たな常態になりつつあります。例えば2025年4月9日のE-mini S&P500 の乱高下では、わずか数分で時価総額が約2.5兆米ドルも急騰し、その後1時間もしないうちに完全に元に戻りました。2025年春には、TOPIXが1975年以降で5番目に大きい短期ボラティリティ上昇を記録し、11日間で18%下落した後、7週間強で完全に回復しました。これは、2024年夏に記録したTOPIX史上3番目の短期ボラティリティ上昇の数カ月後の出来事でした。それ以来、S&P500指数 も TOPIX も上昇基調を辿っています。 つまり、これまでシグナル(急激なドローダウン)と見なされていた動きが、今では単なる「ノイズ」である可能性もあるのです。

“投資家は、新たな地政学的・経済的状況への反応として、「熱狂」と「戸惑い」の狭間で揺れ動いている”

投資家が熱狂と戸惑いの狭間で揺れ動くのは、今私たちが不安定な内外政策、先進国政府の債務増加といった新しい地政学的・経済的状況に直面している一方で、多くの株式市場では企業業績の堅調さが続いているという構図に起因していると思われます。これらは、米国の規制緩和や欧州の防衛費増加などの政策や強力な技術革新によって支えられています。このような一見、二極化した投資行動を引き起こしている原因が何にせよ、その過程には多くの「取りこぼされた果実」が残されています。資産運用会社としての私たちの役割は、変化する市場環境に適応し浮上する機会を捉えることで、お客様の期待に沿ったパフォーマンスを提供することです。

また、伝統的なアセットアロケーションの「経験則」がもはや通用しない場面も増えています。株式と債券の相関は良くても不安定、米国債や米ドルは「安全資産」としての輝きを失いました。これらの経験則は、いつか元に戻るのでしょうか。おそらく、いつかはそうなるかもしれませんが、少なくとも今のところはその崩壊をもたらした要因(高まる地政学的緊張、政府債務の増加、将来にわたり続く可能性のあるインフレ)は、2026年も依然として存在しています。

資産配分:長期ゾーンを起動的に調整

M&G のマルチアセット戦略は、第4四半期(10-12月)は、ほとんど変更を加えず、債券と株式の間で比較的ニュートラルなポジションを維持しました。

株式については、一部の市場ではバリュエーションに過熱感が見られ、指数レベルで割高感もありますが、特定の構成銘柄への集中度が高まっていることでバリュエーションが歪められていると見ています。より詳細に見れば、市場には依然として割安な領域が存在します。例えば、S&P500指数では上位22銘柄が指数の時価総額の50%を占めています。これら22銘柄を除外すれば、指数の平均益利回りは3.9%ではなく、むしろ6.0%に近づきます²。

市場には逆風・追い風が混在しており、企業によって受ける影響は異なります。そのため、私たちは選別と分散こそが耐性の高いポートフォリオを構築する最良の手段だと考えています。

M&Gの株式エクスポージャーは、米国よりもアジアおよび欧州を相対的に選好しています。また、複数のポートフォリオにおいて、テクノロジー・セクターがもたらす構造的変化を反映するため、グローバルなテクノロジー関連銘柄のエクスポージャーを別枠で保有しています。

債券については、イールドカーブの長期ゾーンに投資妙味があるとみています。米国および英国では、米連邦準備制度理事会(FRB)とイングランド銀行による追加利下げの可能性がある一方で、地政学的リスク、政府債務、さらに FRB の独立性の不透明さがもたらすボラティリティが懸念されます。

相対的なバリュエーションを考慮し、引き続きクレジットよりも国債を選好しており、先進国および新興国の長期国債を保有しています。米国債イールドカーブの長期ゾーンについては、金利変動に応じて機動的に調整(過度な恐怖で利回りが急騰した際には買い、楽観で利回りが低下した際には売るなど)し、ポジションを固定せずにボラティリティを活用するアプローチを維持しています。

株式と債券の双方で中立のアロケーションを維持しながらも、私たちは「配分比率そのもの」よりも「中身」をより重視しています。これは、マクロ経済や地政学の視界不良が続いている現状では、市場全般に投資するよりも固有の投資テーマに絞ったアプローチの方がはるかに報酬が大きいと考えるためです。

クオリティ株の投資機会

M&Gの株式戦略では、市場がクオリティ株を敬遠している状況を活用してきました。米国、欧州、英国、アジアの消費財、通信、ニッチ産業セクターには、これまでクオリティ株とみなされていた安定成長を続ける企業に魅力的な投資機会が存在します。これらの銘柄のバリュエーションは企業の業績が堅調だったにもかかわらず、過去18ヶ月で大幅に低下しました。今回のバリュエーション低下はファンダメンタルズではなく、市場の見通しに新たな変化が起こったためだと私たちは見ています。これまで市場で人気だったクオリティ株は、AI関連銘柄に“主役の座”を奪われたことで相対的リスクプレミアムやバリュエーションが急速にシフトしたと思われます。かつて割高だった銘柄の中には、今回の調整を経てバリュエーションが魅力的な水準になっているものも見られます。

積極的にAIを取り込む

AIブームで見過ごされている投資機会を活用しているからと言って、AIの世界に背を向けているわけではありません。

M&Gのグローバル・テクノロジー・チームは、2025年の AI熱狂が多くの銘柄のバリュエーションを押し上げたと指摘しています。過熱したバリュエーションを証明する業績を達成できない企業にとって 2026年は、再評価の年となるでしょう。一方で、AIがもたらす本当の恩恵がまだ過小評価されている企業も多く、選別が極めて重要です。

M&Gの直近の市場見通し「2026年の投資展望:熱狂の中での価値の探求」でも詳述していますが、2025年のAI勝者の今後の展望は、供給制約や新技術の代替可能性の可否に左右されるでしょう。つまり、現在のバリュエーションが正当化される企業もあれば、そうでない企業もあるということです。

すべての船を浮上させていた潮が引き始める今こそ幅広いAI関連株へのパッシブ投資から、よりアクティブな投資へ移行すべきです。すべてのAI銘柄を手放すということではありません。M&Gの転換社債戦略の責任者が指摘する通り、AI関連株には固有のリスクがある一方で、AIにまったく投資しないこと自体もリスクとなり得ます。

2025年は、AIイネーブラーと呼ばれる企業が売上・利益率の急成長によって大幅な株価上昇を達成しました。コンピューティング能力が今後も拡大する限り、AIイネーブラー企業は引き続き魅力的だと考えています。

同時にAI 関連の投資機会はさらに広がり、AI を活用する企業(ユーザー)やAI 技術を提供する企業(プロバイダー)を始め、より多くの企業がAI関連投資の対象になっていくと思われます。投資家がAI に多額の資本を提供したことで汎用化された技術がこうした企業の成長を後押しするでしょう。

ポートフォリオ構築ツールとしての転換社債

以前にも取り上げましたが、転換社債はボラティリティへの耐性が低いポートフォリオにとって魅力的な資産だと考えています。債券フロアが下値を抑制しつつ、株価の上昇局面では株式の値上がりに一定程度追随するよう設計されてるため、市場が下落した局面で転換社債は歴史的に広範な株式市場を上回るパフォーマンスを示してきました3。2025年のような株式市場が好調な年でも、転換社債は株式上昇分の67%を取り込み、堅調な上昇を達成しました4

地政学的リスクの影響

最後に重要な点として、ベネズエラ情勢や米国によるコロンビアやグリーンランド、メキシコへの強硬姿勢を受けて、地政学的リスクが悪化した場合のポートフォリオ構築について、しばしばお客様からご質問を頂きます。

過去のレポートでも述べましたが、一般的に地政学的リスクが市場に影響を与えるのは、企業業績に広範な影響を及ぼし得る場合に限られます。過去2年間の中東紛争を例に取れば人道的観点では悲劇的ではあるものの、市場全体では業績への影響はなかったため、グローバルリスク市場にも影響を与えませんでした。

国債市場はより影響を受けやすいため、地政学的リスクの高まりにより、ボラティリティが増大する可能性が高いと言えます。特に米国が他国への攻撃的姿勢をエスカレートさせた場合、結果は二極化する恐れがあります。事態がベネズエラに限定され、コロンビアやグリーンランドに対する威嚇的な言動があっても、好業績基調が続く限りリスク市場への影響は限定的だと思われます。

しかし、テールリスクは否定できません。グリーンランド、南シナ海、台湾など複数の情勢が同時に進行する現状では、広範な軍事衝突に発展する可能性のある「事故」が発生すれば状況は一変する可能性があります。そのようなシナリオでは、金以外に真の安全資産として考えられるものはほとんどありません。しかし、金への投資をサポートする長期的・構造的な要因があるとはいえ、現時点でそういったシナリオに備えることはより収益性の高い投資機会を逃してしまう可能性を意味するでしょう。機会費用を考慮すれば、今はアルマゲドン(終末戦争)に備えるべき時ではないと考えます。

投資機会を見極めることと予測の違い

M&Gのマルチアセット投資チームは、今手元にある資産を最大限活用すべきだと言います。2025年の市場を特徴づけたのは二極化でしたが、2026年も昨年同様に市場の展開は複雑なものとなるでしょう。地政学的緊張、トランプ大統領のFRBへの圧力、プライベート・クレジット市場に燻る懸念、米中間選挙を巡るノイズに翻弄され、株式と債券は既に相反するシグナルを発しています。

M&Gインパクト株式部門の責任者の言葉を借りると、私たちはこうした出来事の結果や市場の反応を予測できるとは考えていません。むしろ、センチメントが過熱し短期的なノイズが長期的なファンダメンタルズを覆い隠す状況下では、機会を柔軟に捉えて積極的に活用する姿勢を維持することが最善の行動であると学びました。熱狂と戸惑いの狭間には、収穫すべきアルファが存在します。

以降では、M&Gの株式、マルチアセット、転換社債の投資チームが、どのように市場に向き合い、どこに投資機会を見出しているのかをご紹介します。

本レポートが、皆様にとって有意義で、そして興味深いものとなれば幸いです。

1 Source: Bloomberg, 31 December 2025. MSCI World Quality Index とMSCI World Index(ともに米ドル建て、トータルリターン)の相対比較。
2 Source: Bloomberg, 31 December 2025.
3 Source: M&G, Bloomberg, FTSE Global Focus Index and MSCI World Index(米ドル建て、トータルリターン)。2002年まで遡及した期間のデータを使用。
4 Source: Bloomberg, LSEG, January 2026. 転換社債はRefinitiv Global Focus Index (USD)。グローバル株式は:MSCI AC World Gross Total Return Index (USD)。過去の運用実績等は将来の運用成果等を保証するものではありません。

投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。当資料に記載されている内容は現時点におけるM&Gの見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではありません。当資料に記載されている将来予想に関する記述は、現時点において入手可能な情報に基づいたものであり、既知又は未知のリスク、及び不確実性を伴う前提条件に基づいて作成されており本質的に推測的なものです。M&Gは、これらの将来予想に関する記述が正確であること又はこれらが実現することを約束又は保証しません。実際の結果がこれらの記載内容と大きく異なることがあります。当資料は、一般的な情報提供を目的としており、金融商品取引業登録に基づく業務又はM&Gが組成するファンドの持分等の勧誘を目的としたものではありません。