拡大する欧州のノンスポンサード・プライベートクレジットの投資機会

5 分間で理解する 25年10月21日

PCPの本社がストックホルムにあることは、ビジネス上の強みになっていますか。もしくは、制約になることもありますか。

23年以上前にPCPを設立した当初は、確かに主要な地域は北欧でした。しかしその後、欧州全域へと急速に事業が拡大し、現在ではドイツがスウェーデンに次ぐ二番目に大きな市場となっています。スウェーデンには非常に優秀な人材が多いのですが、PCPでは従来から一貫して国際色豊かなチーム作りを意識しています。総勢50名を超える社員の国籍は、14ヵ国に及びますし、欧州各地の提携先やパートナー企業と連携しながら事業を展開しています。

PCPは、起業家やファミリー企業に特化したニッチな市場をターゲットにしています。これは北欧市場ならではの特徴でしょうか。

そうとは言い切れないと思います。PCPにとって二番目に大きな市場であるドイツにも非常に多くの中小企業が存在し、ドイツ経済全体に大きな影響力を持っています。また、北欧諸国とドイツ、ベネルクス諸国の間には、文化的な類似性も多く見られます。

“欧州のノンスポンサード・プライベートクレジット市場において、PCPは最大級の運用会社である”

欧州のプライベートクレジット市場は急速に成長しています。この流れは今後も続くと思いますか。

はい、そうならざるを得ないと思います。特に、競争力や生産性の面で欧州が米国に依然大きく遅れをとっている現状を考えれば、その必要性は明らかです。欧州企業は、起業家支援、デジタル化、サステナビリティ(持続可能性)、エネルギー安全保障といった分野への投資を大幅に増やす必要があります。

こうした欧州の競争力向上のための投資には、 プライマリー・キャピタル(出資金などの初期投資)が必要であり、引き続き資金需要は高水準にとどまるでしょう。ところがプライベート投資の大半は セカンダリー・キャピタル、つまりバイアウト投資などのように、単に買い手から売り手への資金移動に過ぎないのです。プライマリー・キャピタルとは対照的です。

欧州のプライベートクレジット市場では、約9割がスポンサー付きの案件で、その資金の主な使途は企業のバイアウト(買収)です。1 このように、欧州のプライベートクレジット市場におけるプライマリー・キャピタルの需要と供給の間には大きな不均衡が存在し、看過できない問題となっています。これに対し、PCPの戦略の9割以上は、プライベートクレジットを通したプライマリー・キャピタルの提供で、欧州のノンスポンサード・プライベートクレジット市場において、最大級の規模を誇ります。同市場は、まだ発展の初期段階にあり、今後更なる拡大が見込まれています。

PCPの理念は「パーパスに基づいた投資」です。しかしながら、ESG、インパクト、サステナビリティを重視する投資への取り組みは、特に米国で弱まっているように見えます。これは一時的なものでしょうか。

そもそも、サステナビリティの要素を投資戦略に組み込んでいると主張する投資家と、実際にそれを実践している投資家との間には、常に大きな隔たりがあると思います。特に米国では、サステナビリティという価値観に逆行する動きが出てきているようです。私は、収益性の高い事業を築くためには、サステナブルな社会への移行を考慮に入れる必要があると確信しています。ESGやサステナビリティは、パフォーマンスを低下させる要因ではありません。むしろ多くの場合、事業リスクの抑制に寄与し、結果的に財務パフォーマンスを向上させる効果があります。

PCPはクレジットに特化しています。株式投資のような値上がり益が期待できないにもかかわらず、なぜESGやサステナビリティを重視するのでしょうか。

どの貸し手もリスク管理、つまり損失回避を非常に重視しています。期日に融資元本を回収する必要があるため、借り手企業の経営が順調かどうかは、貸し手にとっても重要であることは言うまでもありません。また、PCPは優良な企業を支援し、パートナーとして伴走する会社として認識されたいと考えています。そのため、PCPに対する評価の面からも重要なのです。

ご家族に金融関係の方はいらっしゃらないと思いますが、投資の世界に入るきっかけは何だったのでしょうか。

両親は共に学者で、夕食時には政治や社会問題が話題に挙がることが多い家庭でした。しかし曾祖父のヨーゼフ・サックスは、1902年にスウェーデンの大手百貨店であるNKを創業しているので、ビジネスの血筋もあったと言えると思います。私は、もともとビジネスに強い関心を持っていました。そして徐々に、ビジネスを通して、さまざまな形で社会に影響を与えることができることに気づきました。たとえば、社会の発展にとって重要な経済分野に資本を配分することなどです。私は、財務パフォーマンスの達成と社会的な目標の追求との間に矛盾はないと常に考えています。むしろ両者は互いに補完し合うものです。

“ビジネスを通して、さまざまな形で社会に影響を与えることができることに気づいた。”

今年、M&GはPCP株式の過半数を取得し、PCPはM&Gの一員になりました。なぜ今、大手金融グループの傘下に入ることを決断したのですか。

欧州の競争力向上を背景に、プライマリー・キャピタルへの需要が高まっている状況を目の当たりにし、PCPのビジネスを成長させる絶好の機会が訪れていると思ったことがきっかけです。大きな成長を実現するためには、大手金融グループが備える、資本形成や資金調達に関するより高い能力、さらにシステムやオペレーション面のサポートなども必要だと判断しました。しかし、既存のPCP経営陣は引き続き重要な少数株主として残っており、これは私たちにとって非常に重要な点です。

 PCPのクライアントは、単発案件に限った借り手が多いのでしょうか。それとも借り手とは長期的な関係を維持されていますか。

大半のクライアントは単発案件に限った借り手ですが、融資期間が5~7年に及ぶことが多いため、短期的な関係ではありません。PCPでは企業の成長戦略プロジェクトに対する融資を行うことが多いため、通常多くの企業は、徐々に銀行融資や債券市場を活用した資金調達へと移行していきます。

普段から欧州各地に出張されていると思いますが、お気に入りの都市はどこですか。

欧州の都市にはそれぞれ全く異なる魅力があるので、選ぶのが難しいですね。ただ、あえて選ぶならミラノでしょうか。イタリア料理やイタリアの文化も大好きですし、ストックホルムとは全く異なる雰囲気があり、とても刺激的な街だと思います。次はロンドンでしょうか。

余暇はあまり無いかも知れませんが、ある時はどのように過ごされていますか。

 家族と過ごしたり、自然に触れたりと、アクティブに過ごしています。家族と過ごすことが多いですが、読書をしたり、展覧会に行くこともあります。文化的な活動は私にとって、とても大切です。テニスやスキーをすることも多いですね。夏場はよく海へ行きます。仕事以外では、勝ち負けを気にしない方が良いと思っていますが、テニスの試合となると話は別かもしれませんね!

1 Private Debt Investor: ‘Regional guide: Europe’s managers optimistic despite ,macro challenges’, 30 May 2025

寄稿者
ダニエル・サックス
CEO、Pキャピタル・パートナーズ

投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。本項に記載されている内容は現時点におけるM&Gの見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではなく、また将来の状況やパフォーマンスを予測するものではありません。当資料は、一般的な情報提供を目的としており、金融商品取引業登録に基づく業務又はPCP関連会社が組成するファンドの持分等の勧誘を目的としたものではありません。