不動産
4 分間で理解する 25年1月20日
M&Gは、不動産デットの貸し出し条件を取り巻く足もとの環境は非常に魅力的であると見ています。不動産価格の下落を背景に低い負債水準での融資が可能となっているため、貸し手のリスクは総じて低下している一方で、金利の上昇が絶対的にも相対的にも融資の利ざやを支えています。現在の市場環境を考慮すると不動産デット市場は、好条件の投資機会が得られる良好な状況であると言えるでしょう。
資産クラスとしての不動産の基本的な利点も引き続き健在です。例えば、エクイティの大きなクッションにより、物件価格が下落した場合でも、デットよりも先にエクイティが損失を受けることや、定期的なローン返済が行われるため、キャッシュフローが概ね予測可能であるといった点です。
不動産デットのディフェンシブな性質は、投資家がまだら模様の不動産市場の回復を乗り切るうえでも役立つでしょう。新たな景気サイクルの初期段階では、多くの物件が循環的な上昇の恩恵を受けると予想されますが、物件によってはさらなる価格下落に直面する可能性があります。したがって、資本構造の位置づけを鑑みるとデットに投資することで、潜在的な下落リスクの軽減が期待できます。
さらなる価格下落に対する懸念がある場合は、第一順位のシニア・デットに投資することが解決策になるかもしれません。他方、より高いリターンを求める投資家にとっては、改修プロジェクト向けのメザニン・ファイナンスなど、他の融資形態も魅力的でしょう。
不動産取引市場の停滞期を経て、株式・債券の両市場に対して、投資家は信頼を取り戻しつつあります。金利はピークに達したとみられ、今後は低下する可能性が高いと予想される一方で、不動産価格は、より厳しい環境にあるセクターの物件でも概ね安定ないし回復局面を迎えています。不動産のファンダメンタルズも需要の回復に対して供給が大幅にひっ迫しているため、堅調です。
こうした環境の改善を受け、新たなサイクルの始まりと共に、売買や融資の機会が増加する見通しです。貸し手が「Extend and Pretend(問題を先延ばしにし、問題ないふりをする)」の姿勢から脱却するにつれて、セクターや地域を問わず借り換えが増えることが予想されます。また、改修や開発を含む新規取引では借入れを活用した投資が必要になるでしょう。
ノンバンク・レンダーは、特に銀行が融資にあまり積極的でない分野で強みを発揮できる立場にあります。中でも開発融資は、バランスシート上の扱いを理由に銀行からの融資額は減少傾向にあります。こうした状況は、改修プロジェクトや新規開発案件に対して適度なレバレッジ水準で融資を行いながら魅力的なリターンを発掘する好機を生み出し、次世代の最高級の不動産への資金供給源になるとみています。
また、国内の金融機関は、必ずしも海外物件への融資の取組みに積極的とは限りません。クロスボーダーのローン・ポートフォリオ構築が可能で、法制度の異なる複数の市場を取り扱えるノンバンク・レンダーにとっては、良好な投資機会となり得ます。
ノンバンク・レンダーが持つ資本に対する自由度は、迅速な意思決定プロセスと相まって、時として銀行の融資プロセスより(特に、複数行が関与する融資案件の場合は)有利になることもあります。さらに、レバレッジ水準のより高い「ホールローン」の提供力と、それを満期まで保有できる能力もノンバンク・レンダーにとって、重要な差別化要因となると考えます。
欧州には、幅広い国やセクターに長期の構造的トレンドが生み出す魅力的な融資機会が点在しています。欧州の住宅供給不足の解消には多額の資金が必要であり、大規模な融資機会を生み出しています。銀行などの多くの金融機関では、貸し出しが融資枠の上限に達しているため、ノンバンク・レンダーは複数の市場で優位な立ち位置にあると考えます。住宅セクターは利ざやが薄い場合もありますが、ノンバンク・レンダーは、国内の金融機関や開発リスクの引き受けに消極的な貸し手に比べて、付加価値を高めることができるでしょう。
同様に、欧州大陸諸国における学生宿舎(PBSA)と賃貸住宅セクターの発展は、ノンバンク・レンダーにとって新たな注目すべき機会となるかもしれません。これらのセクターは、英国の類似市場に比べて発展の初期段階にあり、小口または低レバレッジの融資以外の融資が困難な国内の金融機関に対して、経験豊富な貸し手は優位になると思われます。
政治および規制面のリスクはあるにせよ、ノンバンク・レンダーにとって不動産デット市場の見通しは総じて明るいとみています。不動産市場の回復を背景に、高いリスク調整後リターンを目指すノンバンク・レンダーにとって、今年は特に魅力的なエントリーポイントになり得るとM&Gはみています。
また、中央銀行による銀行の監督強化も継続するとみられ、レンディング市場のシェアに影響を及ぼす可能性があると予想しています。オルタナティブ・レンダー、その中でも、単一取引で多額の資金を提供できる貸し手の活躍の場が広がると思われます。
ただし、融資先の選定とデット・ストラクチャリングには、慎重さが求められます。たとえば、PBSA やホテルなどのセクターへは多額の資金が流入したため、物件によってはバリュエーションが高騰している場合があります。そのため、現地の専門家の活用は、持続可能な信用構造と適度なLTV(Loan to Value)を持つ安定したローンの引き受けにおいて不可欠です。
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