新しい資本主義 ― 日本株の価値を追求する

3 分間で理解する 22年5月30日

日本の企業改革は単なる物語ではなく、事実に基づいた見解です。企業努力により、日本は今後10年間、世界で最も収益が伸びる市場になる可能性があります。利益率の伸び、配当の増加と自社株買いによる資本金の減少、M&Aの加速など、すべてが株主還元にとって良い兆候であると思われます

アベノミクスによる日本企業変革のため政府主導が奏功し、日本株は10年間にわたり着実なリターンを提供してきました。2022年4月27日までの10年間で、TOPIXのリターンは年平均で11% (円、複利ベース) でした。

『現在、日本企業がより株主フレンドリーとなり、日本株式市場の潜在的な成長力がリターンとなって顕在化し始めたという数多くの証拠があります』

日本企業がもたらすリターンは企業収益と配当によるものだけであり、バリュエーションの上昇によるものはありません。一方、S&P500指数のリターンは+13.5%(複利ベース)でしたが、リターンの30%はバリュエーションの上昇によるものです。ユーロストックス50指数やFTSE All Share指数などの他の主要市場のリターン (複利ベース) は1桁台半ばでした1

アベノミクスは日本企業の状況を一変させ、10年間に及ぶ目覚ましい改革の道を開きました。岸田文雄首相は、新しい政策課題である「新しい資本主義」で、最近の企業収益性の改善をてこに、広範囲にわたる持続的な経済成長を実現することを目指しています。

バブル経済の崩壊後初めて、この加速度的な改革を支える制度的基盤がようやく整いました。今後、むこう10年間、企業収益と株価の見通しは明るいものがあります。

現在、日本企業がより株主に近い存在となり、日本の株式市場にある潜在的な成長力が投資家へのリターンに現れ始めたという圧倒的な証拠があります。

「日本企業がこれからの10年間で年率2桁の利益成長を実現するために必要な企業の変革を、積極的に後押しする制度面の整備が進んでいます」と、M&Gのアジア株式投資戦略の共同責任者であるCarl Vine は述べています。「日本企業は現在、自社で道を切り拓くための大きな道具箱を充実させているのです。」

積み上げられたバランスシート

日本企業のバランスシートは余剰資産であふれています。約40%の企業では、保有する現預金の額が株式価値の20%以上に上ります。保有するネットキャッシュ (手元流動性から有利子負債を差し引いた金額) が時価総額より大きい会社が、何百社も存在するとVineは強調しています。また、過剰な不動産、持合い株式、非効率的な運転資金も多く見られます。「バランスシートには価値創造につながる資産が非常に多く存在します」とVineは付け加えています。

日本企業の損益計算書にも大きな可能性が垣間見えます。2桁の利益成長率が10年間続いているにもかかわらず、利益率は依然として米国の約半分の水準であり、構造的な改善の余地があることを示唆しています。「日本企業の利益率の低さは、企業戦略が最適化されていないこと、及び過度の業界細分化の組み合わせを反映していますが、両者は現在、急速に改善に向かっています。」

「新しい資本主義」

岸田首相の主要な政策は、労働生産性の向上と賃金の引き上げです。短期的な目標として、首相は企業に賃上げを奨励しており、そのために税制上の優遇措置を講じています。長期的には、労働生産性を改善するためのさまざまな計画に対して政府が多額の投資を実行することを望んでいます。高い生産性は賃金と企業収益の双方を向上させ、より高い経済成長率を達成できるというのが首相の信念です。

首相はまた、日本の家計資産に歴史上最も積極的な変化をもたらすことを約束している、とVineは述べています。これは、家計収入の増加を図るうえで重要です。今日、日本における家計の預貯金額は1千兆円にも上っていますが、そこからの利息はゼロに等しい状況です。これは家計収入にとって重大な機会損失です。

勢揃いしたけん引役

「私たちは、日本の企業行動が変化しているという証拠を目にしているだけでなく、これが既に利益を目覚ましく成長させていると断言できます。また、制度的なの枠組みも改善され、今後も企業業績のさらなる向上を促し続けていることも指摘できます。さらに、現在進行中の企業変革に前向きな政治家が首相に就任し、国内の経済成長や株式保有を支援する一連の政策が打ち出されています。」とVineは述べています。

変革の推進力

「日本のコーポレートガバナンスの本質が変化していることは、議決権が価値をもつようになったことを意味します。これは以前にはなかったことです。」とVineは説明します。「スチュワードシップとガバナンスの改善のおかげで、以前にも増して多くの企業が体質改善に自ら乗り出しています。そして、企業自身が株主に意見を求めるケースが増加しています。」

Vineによると、人口動態も変革の重要なポイントです。日本の高齢化は企業の取締役会構成にも現れています。日本企業のなかで70歳以上のCEOは300人を超えています2。「年配のCEOの経営能力が劣っているということではなく、実際に国内で最高クラスのCEOのなかには年配者が何人もいます。しかし、首相自身が指摘しているように、ソニーの創業者は26歳で起業し、ホンダの創業者も35歳でした。イノベーションによる新たな産業を日本に導くのは若い世代になるはずです」とVineは述べています。

1対象期間は2022年4月27日までの10年間  出所:M&G、Bloomberg
2東京証券取引所市場第一部   出所:M&G、Bloomberg、2020年1月

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