景気後退の圧力が強まるなかで不確実性を乗り越える

4 分間で理解する 22年10月10日

インフレが高進するなか、世界中の中央銀行が金利を引き上げ、世界的な景気後退のリスクが垣間見えるなど、現在の環境は投資家にとって厳しいものとなっています。加えて、地政学的な緊張がさらに高まると、これから迎える冬期を乗り切るための生活費の高騰など、日々の問題がさらに複雑なものになる可能性があります。景気後退の圧力が高まるなか、投資家は不確実な環境で資金を運用しなければならない状況に直面しています。

英国の9月のインフレ率は前月からやや低下し9.9% (前年同月比) になりましたが1、ここ40年間の最も高い水準から依然としてそれほど低下していません。この程度のインフレ率の低下は、これから迎える冬期を乗り切るための生活費の高騰に直面している英国の大多数の家計にとっては焼け石に水です。また、不確実な投資環境を乗り切ろうとしている投資家にとっても問題が解決に向かう気配がありません。

エネルギー価格は記録的な上昇を続けており、また食品価格もサプライチェーンの問題や異常気象によって上昇を続けています。一方、ロシアからの天然ガス供給の減少は、欧州全体で進行中のエネルギー危機をさらに悪化させています。

『現在、債券と株式の双方の市場に影響を与え得るさまざまな要素がさまざまな方向から押し寄せています』

「現在、債券と株式の双方の市場に影響を与え得るさまざまな要素がさまざまな方向から押し寄せており、これらの要素のうち、どれが現実化するかの見通しがほとんど立たず、現在の市場は広範なマクロ経済の要素が左右する状況ではないと考えています。この時点で、大規模な賭けに出るのは極めて危険です。(現在の市場の状況を勘案して) M&Gは戦術的な投資を行っており、また非常に選択的に投資しています」とM&G インベストメンツの株式・マルチアセットの最高投資責任者であるファビアナ・フェデリ (Fabiana Fedeli) は述べています。

ボラティリティの高い市場

あらゆる市場のボラティリティが高いことに多くの企業は巻き込まれ、予想だにしない値動きに直面する可能性があります。一方、良いニュースは、ボラティリティが引き起こしている市場価格が本来あるべき価値とかけ離れているという、特別な投資機会を作り出していることです。

フェデリによると、市場の下落時に、ファンダメンタルズの良好な企業、特にテクノロジーなどの企業の株価が過度に下落し魅力的な機会が生じることを実際に目にしてきました。ただし、銘柄選択は引き続き重要です。

地域別では、フェデリは英国市場での投資機会に注目しています。「M&Gは FTSE 100銘柄のなかの数社の大企業を選好していますが、英国のマクロ経済状況については非常に慎重な見方をしています。その大きな要因は、政府債務が増加する可能性であり、特に、インフレ圧力が高まるなか、インフレに連動する政府債務が多いことです」。

ただし、FTSE 100 企業の売上高の約75%は英ポンド以外の通貨建てです。不確実性が漂うなか、このことは英ポンドに換算した企業の売上高を押し上げるなど、英国企業が英ポンド安の恩恵を受けられることを意味しています。また、FTSE 100企業 の現在のバリュエーションは、数十年ぶりの低い水準にあります。

インフレの影響

世界中の中央銀行は、なかなか収束しない高いインフレ率に対処するために金利を引き上げ続けています。最近では、米国連邦準備制度理事会 (FRB) と欧州中央銀行 (ECB) が 75 ベーシスポイントの利上げを実施し、一方イングランド銀行のベースレートは現在 2.25%2です。世界銀行は、高い金利水準が2023 年に世界的な景気後退を引き起こす可能性があると警告しています3。成長へのリスクがあるにもかかわらず、各中央銀行は引き続きインフレ抑制に強い姿勢で取り組んでいます。

夏の間は、市場の観測どおりに各国の中央銀行は行動を起こしませんでした。投資家は、現在の資産価格が金融引き締めのペースを正確に反映しているのか、それともさらに下落するかを見極めようとしています。

フェデリは、「このことが最も重要です。債券市場では、利上げの影響により、残存期間の比較的短い債券が幾分売られていますが、期間が長い銘柄は比較的安定しており、特に米国で顕著です。M&Gの投資姿勢は総じて慎重です。社債に関しても慎重ではありますが、バリュエーションが改善しており、投資機会があることを十分認識しています」。

「株式市場に関して言えば、ニュースに大きく左右される状況にあります。最終的に適切なバリュエーションは、恐らく6月の安値に近い水準だと感じています。6月の安値に近い水準ということは、恐らく穏やかな景気後退、世界的な経済減速の状況になっていると思われますが、地域によって状況は異なるものになると考えられます」。

「ただ、信用危機は想定していません。もし信用危機になれば、株価下落圧力は高まり、社債にも価格下落のストレスがかかると考えられます」。

補足

フェデリは「一方で、ウクライナでの戦争が終結する可能性は常にあります。鍵となるのは、戦争の終結そのものではなく、化石燃料の輸出制裁が解除されることです」。これは市場にとって強力な後押しになるでしょうが、すぐに実現するか、あるいは制裁が単純に解除されるかを予測することは困難です。一方、各国の中央銀行がすぐに政策を180度転換する可能性は非常に低いと考えられます。

今後も多くの要素が投資環境に重くのしかかり、不確実性が払拭されないなかで、どのように投資するかが大きな課題です。

インフレが名目リターンに与える影響と、株式市場の実質リターンがマイナスになるような事態を想定する必要があり、「投資資金を眠らせておくわけにはいかない」とフェデリは言います。

「(反発を期待して)20%から25%下落している市場に投資し、黙っているだけではインフレ率を超えるリターンを得ることは余り期待できません。市場のボラティリティと混乱を投資機会と捉えることができるアクティブ運用を行う投資家にとっては、良好なリターンを獲得できる多くのチャンスがあると考えます」。

1 出所:英国国家統計局『インフレと価格指数』(ons.gov.uk)、2022年9月14日
2 出所:イングランド銀行『Official Bank Rate history』(bankofengland.co.uk)
3 出所:世界銀行グループ『Is a Global Recession Imminent?』(worldbank.org)、2022 年 9 月 15 日

 

投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。

本項に記載されている内容は現時点におけるM&Gの見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではなく、また将来の状況やパフォーマンスを予測するものではありません。

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