インフレは長期化するのか

2 分間で理解する 21年11月23日

この30年間における国債市場の長期的な傾向として、グローバリゼーション、テクノロジー、及び各国中央銀行による緩和的な金融政策により金利水準が際限なく低下していることが挙げられます。しかし、新型コロナウイルス感染症が発生して以来、量的緩和と中央銀行のバランスシートの大幅な拡大により、政府債務が急増しました。

新型コロナウイルス感染症が引き起こした危機から抜け出すにつれ、サプライチェーンの問題と原材料価格が急騰するなかで、「一時的」と言われてきたインフレ率の上昇は、低下する兆候がますます見られなくなってきています。現実問題として、足許の米国のインフレ率は6.2%まで上昇しています。これはこの30年間で最高の水準であり、英国においても、イングランド銀行(BoE)の予測では、インフレ率は上昇を続け、来年のピーク時には4.4%に達するとしています。

この状況に関して、M&Gのパブリックデットチームのインベストメントスペシャリスト責任者であるデイビッド・パーソンズとシニア・ポートフォリオ・マネジャーであるマイルズ・ティムは、最近のポッドキャストにおいて、鍵となる「各国の中央銀行は政策のコントロールを失ったのか」に対する見解を示しました。

「現在のサプライチェーンの問題がインフレを悪化させていることは間違いありません。英国と米国で見られているような『ある時点の』インフレ率は、今後のインフレリスクを誇張させていると思われます。そうは言っても、インフレ率は実際に高く、目標をはるかに上回っています」とティム氏は述べています。「アラジンと魔法のランプ」でランプから解放されたジーニーのように、中央銀行はインフレ率を自由にさせているという懸念を投資家は強めているのでしょうか。

インフレ ー 解放されたジーニー

「今後2~3年のインフレ率予想は高いのですが、それは一時的である可能性が高いため、今後2~3年のインフレ率がどの程度物価価格に織り込まれているかはそれほどの問題ではありません」とティム氏は述べています。「問題となるのは今後10年間の期待インフレ率がどのように物価に織り込まれているかです。なぜならば、今後10年間の期待インフレ率は投資家が長期のインフレ動向(構造的変化を表す)をどう見ているかを反映するからです」

国・地域ごとに事情が異なる点にも注意が必要です。例えば、欧州では、今後10年間の期待インフレ率は、欧州中央銀行(ECB)の目標に沿った数値です。一方、米国では、今後10年間の期待インフレ率は年平均で2.35%〜2.40%程度であり、連邦準備制度理事会(FRB)の長期的目標の2%を上回っています。

「各国の中央銀行は必要以上に緩和的ではないと異議を唱えるでしょう」


大西洋の反対側の英国では、インフレ期待が上昇し、10年物先物金利は約3.5%に上昇しています。

「英国市場で今後数十年間の期待インフレ率は、過去10〜20年間よりも幾分高い数値であることは明白です。現在の高いインフレ率が一時的な要因を包含しているため、予想インフレ率は誇張した数値になっているのは確かですが、投資家がインフレ昂進を若干懸念し始めているというのは事実です」とティム氏は述べています。

インフレ率の急上昇は一時的か

最近、イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)は政策金利を0.1%に据え置くことを決定しました。この決定は、経済がさらに低迷するとの前兆でしょうか、あるいはインフレ率上昇に直面しても中央銀行が過度と言えるほどの緩和策を維持すると予想すべきでしょうか。

「各国の中央銀行は必要以上に緩和的ではないと異議を唱えるでしょう」とティム氏は考えています。「各国の中央銀行は恐らく、インフレ率が下がることを単に期待しているのではなく、科学的に分析した結果だと主張するでしょう。とはいえ、足許のインフレ率急上昇が一時的な要因によるものであり、今後数か月間で、遅くても来年までにはインフレ率が低下傾向になると各国の中央銀行は考えているでしょう」

何かリスクはあるのでしょうか。中央銀行の見方が正しくないとなった場合、今後数ヶ月のうちに行動を起こしインフレを抑制しないと手遅れになるかもしれません。

本項に記載されている見解は、投資の推奨、助言、予測に該当するものではありません。投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。数値は過去の実績であり、将来の結果を保証するものではありません。


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