インパクト投資:スイートスポットを見つける

6 分間で理解する 22年1月21日

インパクト投資は、気候変動、貧困、生物多様性の喪失をはじめとする、世界的に重要な課題の解決に寄与する革新的な投資ソリューションに焦点を当てているため、投資機会は拡大し続けています。プライベートクレジットに焦点を当てたインパクト投資家にとって、社会的、環境的インパクトに投資するうえで特に興味深い分野をいくつか紹介します。

野心に満ちた美辞麗句→信頼できる行動→ 現実世界にインパクトを与える

2021年に起きたことは、社会的、環境的、生態学的、経済的であるかを問わず、世界の重要な課題の多くについて、(SDGs達成のための)「行動の10年(Decade of Action)」で示された規模と速度で解決するには、火急に資金源と取り組み方法を確保する必要があります。

2021年の後半は、気候変動に関する野心的なネットゼロ目標が多く掲げられました。第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、運用資産残高の合計が130兆米ドルも上る450を超える金融機関がネットゼロ社会実現のための取り組みに署名しました(GFANZ)。GFANZは、2050年までに全ポートフォリオでネットゼロを達成することと、今後30年間でネットゼロ経済の構築に必要と推定される100兆米ドルの投資を実行することにコミットしました1

『プライベートクレジット市場の異なる分野は、それぞれ異なる方法で投資機会を提供する』


美辞麗句だけではなく、意味のある、信頼できる行動を起こす必要があるという声が高まっており、気候変動と持続可能性に関しての重要な目標を達成するためには、必要とされる多くの革新的なソリューションに資金を提供する必要があり、そのためには民間部門と公共部門が協力して迅速に行動を起こさなければなりません。市場原理に基づいたソリューションや目に見える環境、社会インパクトを現実世界にもたらすことができる資産に投資する機会は、今後増加する一方だとM&Gは考えています。さらに、ポートフォリオに環境、社会インパクト投資を組み入れることを検討している投資家は、2022年にインパクトを推進・提供する可能性があるプライベート市場に目を向けるべきと考えています。

インパクト投資の機会を見いだす

インパクト投資のポートフォリオをプライベートクレジットで構築する際には、最もインパクトの高い投資機会を分析し、選択するための独自の堅固なインパクト基準と枠組みが必要ですが、同時に高いオリジネーション能力をもつことは、適合する案件をプライベート市場で見つけるために不可欠です。

プライベートクレジット市場のなかの異なる分野は、異なる方法の投資機会を提供します。M&Gは、信用ファンダメンタルズの質を犠牲にすることなく、優れた価値を提供する市場分野に投資していることを確かなものにするために、インパクト案件を選択するにあたっては幅広い投資機会を対象にしています。グローバルでM&Gがもつ独自のチャネルとネットワークを活用して、「コアでない」市場におけるインパクト案件に投資する投資機会を数多く発見してきました。このような案件は格付が高く、多くの場合、信頼できる政府や政府機関が多額の出資をしている機関に対してのファイナンスであり、シニア債権者に対して追加的な与信保全や信用強化を提供します。

インパクトファイナンスの重点分野

この約12か月間に行ったインパクト投資及びパイプラインに現れたばかりのインパクト案件が、何に焦点を当て、何を達成しようとしているかを分析した結果、興味深い投資機会が急増している分野とテーマを特定しました。

社会的包摂:経済的(金融)包摂、健康と社会サービス、社会的で手頃な価格の住宅という重要なインパクトテーマを網羅する、社会インパクト投資案件が次々と市場に登場してきています。

最近の一例として、インドにおいて、金融サービスを受けることができない消費者や、中小を含めた企業に転貸を行うノンバンク(NBFC)に融資するプラットフォームに対するシニアローンを供与する案件が挙げられます。

パンデミックとその後の景気回復のばらつきが引き起こした経済の不均衡が多くの社会問題を悪化させていることが顕著となっており、その解決の重要性に対する認識が人々のなかで強くなったことを背景に、解決のための資金の必要性が高まり、それに応えるように資金を供与する案件が増加しています。インパクト投資家は、拡大している社会的不平等に対処し、貧困の削減や経済面での自立機会の障壁を打ち破ることを可能にする規模の資金を提供することができる投資家層であると考えます。

気候ソリューション:気候変動とより広範な持続可能性の目標を達成する必要性が高まっており、その過程で信頼できる(そしてより科学に基づいた)中間目標が策定されるにつれて、環境に貢献するインパクト資産の急増が予想され、そのための資金調達が中期的には拡大する可能性があると考えています。英国を例にすると、2050年にネットゼロの目標を達成するためには、2020年~2050年に必要なグリーン投資額が1.4兆英ポンドになると気候変動委員会は推計しています。世界の二酸化炭素排出量の大部分がエネルギー部門からのものであることを考えると、低炭素社会への移行、そして最終的にネットゼロ社会達成のためには、紛れもなく、再生可能エネルギーの生産能力向上やエネルギー効率化技術への多額の投資が必要になります。

再生可能エネルギーと代替エネルギー源:ラテンアメリカにおける複数の中小規模の太陽光発電設備の建設と一括運用に資金を供与するプロジェクトを含め、再生可能エネルギーのプロジェクトに資金を供与する投資案件を複数検討しています。ラテンアメリカにおける案件は、再生可能エネルギーへの移行を支援すると同時に、石炭を使用したエネルギー生産を、段階的ながら廃止することをサポートします。

上記に挙げた以外でも、気候変動(緩和、適応、耐性力)に対処しようとする投資可能なインパクトソリューションの範囲は広く、複数のセクターや業界にまたがって進化しています。

サーキュラーエコノミー(循環型経済):最近発表された『M&G SDG Reckoning Report』に記載されているように、パンデミックにより、使い捨てプラスチックの使用量は衝撃的に増加し、無駄がますます問題化しています。無駄だらけの現在のリニアモデル(「原料・生産・消費・廃棄」という直線的な経済活動)から脱却して、世界的に循環型経済に移行する必要性が緊急の課題であることを浮き彫りにしました。

廃棄物からのエネルギー回収(WtE):廃棄物を出すこととその対処に関する問題は、資源の枯渇や気候変動などの他の環境問題と密接に関連する、世界全体の課題として急速に深刻化しており、この課題に焦点を当てている多くのインパクト資産が見られるようになりました。社会が発生する廃棄物を利用した電力と暖房を住宅に供給する最新のWtE施設は、資源効率の高いサーキュラーエコノミーへの移行を後押しし、さらにより広いネットゼロ達成の野心にも寄与するという認識が広がっています。

生物多様性:M&Gは最近、「持続可能な食品、農業、林業」という重要なインパクトのテーマ(M&Gのインパクト適格基準による)をもつ興味深いファイナンス案件の打診を受けました。その案件は、ニュージーランドを本拠とする、持続可能で環境に優しい方法での食料生産に取り組んでいる大規模の農業関連企業に、シニアローンを供与するものでした。

生物多様性の喪失に対する問題意識は、この18か月ほどで高まりました。世界は、自然と動植物の生息地の喪失、並びにそのことが、人類のウェルビーイングと安定した気候の基盤である生態系に悪影響を与えているという厳しい現実に気付き始めました。Nature-based solution(自然に根ざした社会課題の解決策)が、2030年までに必要とされる、費用対効果の高い気候変動対策の3分の1以上を賄うことができるという研究結果もあります2。問題解決のモメンタムは今年さらに強くなる見通しであり、2022年5月に中国で開催される生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)の第2部で、自然に関する新たな世界的目標が策定されると予想されています。

インパクト投資機会の多様なポートフォリオ

今後、プライベート市場は、具体的なインパクトを現実世界にもたらすことを促進するために必要な投資資金を集めるための重要な鍵であると同時に、このような投資は投資家に、より高いリスク調整後リターンを提供することができると思われます。多くの投資家が、自社のポートフォリオが環境、社会インパクトを与えることを検討の材料にする傾向を強めているため、「純粋な投資」とともに、プライベートクレジットが特定の目標の達成を目指すという特性を備えていることにより、プライベートクレジットにおける投資機会が、投資家のインパクト目標の達成に寄与すると考えます。

国連グローバル・コンパクト『Nature-Based Solutions to Address Climate Change』

2 ネットゼロのためのグラスゴー金融連合(Glasgow Financial Alliance for Net Zero、GFANZ)『Amount of finance committed to achieving 1.5°C now at scale needed to deliver the transition』2021年11月3日

投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。

本項に記載されている内容は現時点におけるM&Gの見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではなく、また将来の状況やパフォーマンスを予測するものではありません。

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