プライベートデット
3 分間で理解する 23年2月27日
マクロ経済環境には依然不確実性が残ります。投資家は、高金利と2桁のインフレ率、そして世界的な景気後退の可能性がある状況に置かれていることを実感しています。
世界銀行は、今年の世界経済成長率が1.7%まで減速すると予想しています1。この成長率はこの約30年間において、世界金融危機が勃発した2009年とパンデミックが引き起こした世界同時不況が起きた2020年に次ぎ3番目に低い水準です。
現在のマクロ経済環境においても、欧州の商業用不動産デットは、下値抵抗力を有しながらも魅力的なリターンを提供する特性には変化がないと考えています。一般的に商業用不動産案件では、エクイティ部分が比較的大く、担保の価格が下落した際のクッションが厚い点や、コベナンツが設定されていることでデット部分の安全性が高く保たれています。このようなディフェンシブな特性により、商業用不動産デットは、予測可能なキャッシュフローとともに、一般的な不動産エクイティ投資の代替となる魅力的な選択肢だとM&Gは考えます。
伝統的な貸し手である銀行は、世界金融危機により自己資本規制が厳格化していることを受けて不動産融資を縮小させており、需要と供給が不均衡な状況をつくり出しました。
「この状況は、ノンバンクの貸し手の市場シェア拡大につながっていますが、現在の市場の混乱と不安定な不動産市況により、銀行の不動産融資額の減少に拍車がかかる可能性もあります」とM&G リアルエステート ファイナンス の共同運用責任者であるダンカン・バティは説明します。
英国、フランス、ドイツを合わせると、2023年と2024年だけで約2,000億ユーロの商業用不動産デットが満期を迎えます2。
「現在のような厳しい市場環境では、銀行が融資規模を縮小させながら、審査基準をより厳格化することが予想されます。その結果、借り換えの必要性が生じ、ノンバンクの貸し手が融資を拡大する機会が訪れると考えられます」とバティはコメントしています。
政策金利引き上げに伴う基準金利の上昇は、貸し手のトータルリターンを向上させます。しかし一方では、金利の上昇は不動産に関わる調達コスト上昇の圧力にもなっており、不動産エクイティ投資のリターンに影響が出てくる可能性があります。商業用不動産デットの貸し手にとって、物件価値に占めるデットの比率はあくまで一部であり、物件価格の下落の影響を受けにくく、リターンが維持される傾向にあります。
「金利の上昇は、特に不動産からの収入が金利に連動しない場合、不動産デットの借り手が約定どおりに元利払いを実行する能力に影響を与える可能性があります」とバティは述べています。
キャッシュフローを重視する審査は、金利上昇の許容範囲を予測することに効果を発揮します。現在のように各中央銀行がインフレ抑制を進めているなかで、より強固な保護策が必要な場合は、借り手に金利のヘッジ策を実行させることで金利上昇リスクをさらに軽減することができます。
また、金利の上昇は従来型の貸し手である銀行による供給が不足するという構造をもたらし、代替的な貸し手であるノンバンク投資の好機になる可能性があります。「今後は、金利の上昇が借り手のインタレスト カバレッジレシオ(以下ICR)を低下させると想定されるため、厳格なICR要件を課す銀行からの融資が縮小する可能性があります」とバティは述べています。
インフレリスクは、商業用不動産ローン市場においてさまざまな形で影響を及ぼす可能性があります。「例えば、資金調達コストの上昇は、物件が生み出す営業純利益を減少させるため、ローンの利払いに影響を与える可能性があります。資本支出を必要とする物件では、建設コストの上昇は、デベロッパーが計画どおりに工事を完了させるために必要な資金調達に悪影響を与える可能性があります」とバティは付け加えています。
商業用不動産ローンは、インフレリスクを軽減するのに役立つ資産だとM&Gは考えています。例えば、担保不動産からの収入は、(小売物価指数 (RPI) や消費者物価指数 (CPI) 連動の契約により) ある程度はインフレ率に連動しており、コストの上昇を部分的に相殺できると考えられます。ただ、インカム収入の増加がコスト上昇を完全に賄えるとは言い切れません。
不動産デットが有するリスク軽減策として、利益率が低下した場合に備えた積立金の設定に加え、建設コスト上昇に備え、建築費を事前に確定させることや適切な次善策を予め策定することなども可能です。
商業用不動産ローンのシニアクラスは、資本構成の中で最もリスクの低い資産クラスです。シニアクラスには保守的なLTV が適用されており、LTVは世界金融危機後に大幅に低下したのち、現在では50%~60%の水準で安定しています。
保守的なLTV基準は、担保物件の価値が大幅に下落しないかぎり、シニアクラスの元本が毀損しないことを意味しており、不動産価格下落の影響を最小限に抑えることが期待できます。また、シニアクラスの貸し手には、物件の第一順位の抵当権を有することと、不動産が挙げるキャッシュフローが優先的に返済に充てられるという有利性があります。
M&Gの商業不動産デッドにおけるシニアクラスは、投資適格級のリスクプロファイルを実現出来るよう構築されており、通常、借り手は利払いを継続的にキャッシュで行うという条件を設定します。
インカム収入が得られる物件が担保になっている商業用不動産デットのシニアクラスは一般的に、同等の格付けを有する社債より高いスプレッドを投資家に提供します。トランジションファイナンスや開発ローンは案件数が少なく、一般的に利息が元本に組み込まれるされるような特殊なスキームであるため、審査、組成、モニタリングに専門的知識が要求されるため、このような資産に投資することでリターンをさらに向上させることが期待できます。
商業用不動産のメザニンクラスは、資本構成においてエクイティよりは上位ですが、シニアクラスより下位であり、高いリターンを提供します。メザニンクラスは資本構成の中では負債であり、LTVが通常60%~80%であることから、エクイティ部分がクッションになることで魅力的なリターンが期待できます。不動産価格が下落した場合、まずエクイティ投資家が損失を負担するため、メザニンクラスのリターンは不動産価格が下落する市場環境下でも安定的に推移する可能性があります。
メザニンローンに投資することを通じて、より高いリターンを目指す投資案件は、特に魅力的だと考えています。シニアクラスの貸し手のリスク許容水準が低下した場合、メザニンクラスのリスク水準も低下することが想定され、メザニンクラスの回収リスクが改善する一方で、市場金利の上昇を受けて、より高いリターンを得られる可能性があります。
投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。
本項に記載されている内容は現時点におけるM&Gの見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではなく、また将来の状況やパフォーマンスを予測するものではありません。
当資料は、一般的な情報提供を目的としており、金融商品取引業登録に基づく業務又は当社関連会社が組成するファンドの持分等の勧誘を目的としたものではありません。