インフレからポートフォリオを守るには?期間の短いプライベートクレジットに注目

8 分間で理解する 31 1月 22

多くの先進国ではインフレが高進しており、主要国の中央銀行に金融引き締めのプレッシャーがかかっています。このような環境下では、期間の短いプライベートクレジットへの投資を検討することを推奨します。この資産クラスの投資可能なユニバースは、主として変動金利ローンや短期の指標金利に連動した商品で構成されており、インフレと金利リスクをヘッジする特性を備えていることから、比較的安定したインカム収入が期待できます。

インフレ ― 猛烈な勢いで戻ってきているのか

消費者物価の上昇が一時的なものかについては(現在のところ)判断がつきませんが、インフレの再来は、市場や政策立案者を動揺させています。これは、オミクロン株のまん延に伴う新型コロナウイルス感染者数の急増、エネルギーコストの高騰、世界的なサプライチェーンの混乱、労働力不足など、せっかく芽生えてきた成長の勢いを落とすことにつながる逆風要因が表面化しているなかで起きています。

ほとんどの先進国は、1990年代初頭の短い期間を除き、1970年代以降の長期間にわたってインフレに苦しむことはありませんでした。1970年代までの数十年間は、インフレ率がほぼ年率約2〜3%で推移していました。

『金利が上昇する環境では、期間の短いプライベートクレジットへの投資を検討することを推奨します。』

効果的にリスクをヘッジする

年金基金のような多くのアセットオーナーは、インフレをリスク要因として捉えています。インフレが年金債務に与える影響は、どの程度インフレヘッジが実施済みか、年金給付がどのようにインフレ率に連動しているかなど、細部では基金ごとに異なります。インフレ率に連動した債務を有していながらヘッジが完全でない(実際のインフレ率を正確に予測するのも難しい)基金は、インフレ率が上昇することにより、資産に比べて負債の現在価値が大幅に増加し、バランスシートを傷つけることにつながります。一方、いわゆる閉鎖型の多くの確定給付基金は、キャッシュフローが既にマイナスの状況であることを勘案すると、インフレがキャッシュフロー問題を深刻化させる可能性があります。

現在のインフレが長期化するかどうかにかかわらず、アセットオーナーはどのようにしてインフレリスクを効果的にヘッジできるのでしょうか。完璧な(そして費用のかからない)「ヘッジ方法」は存在しません。直接的で能動的なヘッジ戦略を採用する以外でも、インフレの影響を受けにくい資産やインフレ環境において価格が上昇する傾向のある資産を組み入れるなど、インフレ環境下におけるヘッジ手法は存在します。

インフレ連動国債のように、インフレをヘッジできる仕組みの資産に直接投資することもヘッジの手法ですが、そのほかにも、無リスクの短期金利を上回るリターンをもたらす可能性があるクレジット物に分散投資する方法もあります。物価連動国債への投資は物価に連動した債務を抱える年金基金にとってヘッジ方法の一つですが、物価連動国債は世界的に需要が高く、供給が追いつかない状況にあり、国によっては、物価連動国債そのものが発行されておらず、また、バリュエーションが高くなる傾向があります。

物価連動国債の入手が困難であるため、アセットオーナーは、他の伝統的なインフレの「間接ヘッジ」手法や、現物不動産やインフラ資産などの実物資産を含め、歴史的にリターンが長期のインフレ率を上回っている(悪くても同水準)資産クラスに目を向ける必要があると思われます。このような資産にどの程度投資するかは、投資の目的、資産クラスの特性(インフレ環境下で増益が期待できるセクターや企業)、案件ストラクチャーなどで、インフレ率と正の相関関係にあるか、などの要因により異なります。

コモディティ、特に金をはじめとする貴金属は、長い間インフレに対して「効果的な」長期ヘッジとして有望視されてきましたが、金のリターンは、インフレが年を通じて懸念されていた2021年において、ほぼ横ばいでした。また、金の需要は投機的である傾向が強いことから、ボラティリティが高くなる傾向が強く、そして忘れてはならないことは、貴金属はインカムを生まないということです。

インフレのリスクを軽減し、比較的安定したキャッシュフローを求める投資家にとって、期間の短いプライベートクレジットや流動性の低いクレジットをポートフォリオに組み入れることは「ヘッジ」として機能するのでしょうか。

急上昇する消費者物価指数を抑制させるために採用される中央銀行の政策は、通常、短期金利を引き上げることです。期間の短いプライベートクレジットや流動性の低いクレジットは、デュレーションが短いことや変動金利という特性を備えており、さらに通常はスプレッドが魅力的な水準であるため、金利上昇とインフレ高進の環境では、良好な相対リターンと同時にインフレに強い特性を提供すると考えられます。

インフレ率の加速が利上げの必要性を高める

各国の中央銀行は既に金融引き締めに舵を切っています。英国では、インフレ率が10年ぶりの高水準になるなどのインフレ圧力の高まりを受けて、イングランド銀行は早期の対策として、12月に政策金利を0.25%に引き上げることを余儀なくされました(注:2月3日に0.25%引き上げ、現在は0.5%)。米国においても、インフレ率が30年で最も速いペースで上昇していることを受けて、連邦準備制度理事会(FRB)は、2022年中の利上げ(1回当たり25bps)を3回行う見通しを示すとともに、3月に完了が予定されているテーパリング(資産買入額の段階的減額)のペースを2倍にすることを示唆し、金融政策に対するスタンスがよりタカ派的になりました。

欧州全体でみた場合、インフレの様相は米国や英国とは若干異なっていますが、ユーロ圏のインフレ率は目標を大幅に上回っています。欧州中央銀行(ECB)はこれまで、2022年後半には利上げが開始されるとの市場の予想どおりには動かないことを示唆してきましたが、物価上昇が現在予想されているよりも根強く、一時的ではないことが明確になった場合は、インフレ高進を抑制するためにECBも金利を引き上げざるを得ないとの意見が市場で拡大しています。

変化する状況のなかで債券ポートフォリオが直面する課題

インフレ率の上昇とそれを抑制するための利上げという新しい現実により、アセットオーナーは現在の債券投資の配分を再検討し、必要なリターンを得るためのリスク耐性をポートフォリオが十分に備えているかを再評価するようになりました。コアとなる債券の配分は、通常は固定金利の従来型債券(国債、投資適格社債)が中心で構成されています。そのため、ポートフォリオは債券価格とリターンは金利上昇の影響を受けやすい状態です。

また、固定金利の商品、特にスプレッドがタイトで投資時のバリュエーションが高い銘柄を保有している場合は、インフレの進行に伴ってリターンが悪化し実質的にはマイナスになる可能性があることも理屈のとおりです。結果的に、実質リターンが、インフレや利上げ対する強いバッファー機能を有する資産に対して劣後することになります。

ポートフォリオをインフレから守るための変動金利資産への投資

アセットオーナーは、現在の低金利環境では、従来のような債券に投資することでインカム収入を得るのが難しいと感じています。このため一部の投資家は、リターンを求めて信用リスクの高い銘柄、あるいは、より長期の銘柄 (デュレーションリスクが高くなることにより金利感応度が高まる)への投資を検討することを余儀なくされました。ご存じのとおり、デュレーションリスクを大きくすることは、金利上昇時には望ましくない選択肢です。

期間の短いプライベートクレジットなど、好リターンが期待できる変動金利の資産への配分を増加させることは、債券ポートフォリオの金利感応度を最小限に抑えることでインフレリスクをヘッジしながら、リターンを良化させることにつながると考えられます。

プライベートクレジットに配分するメリット

長年にわたり、アセットオーナーである機関投資家は、リターン目標の達成、短期の負債に見合った安定的なインカム収入の獲得、並びにリスク分散を主眼にプライベートクレジットや低流動性クレジットのユニバースに投資してきました。また、プライベートクレジットや低流動性クレジットに投資することで、クレジット投資ポートフォリオ全体のデュレーションを短期化できることを理解しています。これは、企業デット(担保付きのレバレッジドローンのシニア債権など)や非企業デット・ストラクチャードファイナンス(資産担保証券(ABS)、相当のリスク移転(SRT)案件、消費者金融など)のデュレーションが非常に短く、市場金利に連動する変動金利であるからです。

高いインカム収入、短いデュレーション

『高いインカム収入、短いデュレーション』であるプライベートクレジットに投資することで、大きな投資リスクを負うことなく、他の債券クラスや商品に比べて幾つかの点でメリットがあると考えられます。プライベートクレジットは、基本的な信用力を備えている一方、通常信用リスクに十分見合うだけのスプレッドを提供するとM&Gは考えています。

金利上昇への耐性を具備:金利が上昇する環境では、期間の短いプライベートクレジットに投資することを再検討する価値があるというのがM&Gの見解です。変動金利であるため、金利上昇時の利率は、SONIA、Euribor、SOFRなどの短期参照レート変化に応じて、短い間隔で見直され、高く設定される傾向にあります。通常は3か月(90日)ごとに見直されることから、デュレーションはほぼゼロです。このような資産への投資は、ポートフォリオの金利リスクを最小限に抑えられるだけでなく、ヘッジ目的で保有する担保の購入のための面倒な資金調達の必要もなく、金利上昇時の恩恵を受けることができます。ベースである短期参照レートが上昇すると、ローンからの受取利息も上昇します。

良好なインカム収入の獲得:市場金利が低く安定している環境では、期間の短いプライベートクレジットが良好なインカム収入を安定的にもたらすことが期待できます。ローンでは、通常参照金利にゼロ%の下限金利が設定されており(約50bpsの価値に相当)、インカム収入が確保されています。ダイレクトレンディングにおいては、従来のキャッシュフロー型融資、アセットベース融資(ABL)のいずれの場合でも、リスク調整後リターンが高くなることが期待されます。これは、このような資産は通常、セカンダリー市場での売却が容易でないことを補う「低流動性」(「複雑性」でもある)プレミアムを提供し、借手のニーズに合わせた独自のストラクチャーを採用していることによります。このように、低流動性と複雑性は、デットの特性に起因するある程度の低流動性を容認できる投資家にとって、追加的な収益源となる可能性があります。

不動産デットは変動金利商品としてストラクチャーすることが可能で、デットの利息は担保の商業用不動産の賃料から支払われます。欧州ABSの変動金利債も、公募の同等の債券よりもボラティリティが低く、償還までの受取利息により、キャリーによる定期的な収入の獲得を通じて利回り向上が期待できます。

ポートフォリオの分散化:プライベートクレジットをポートフォリオに組み入れることは、潜在的な利回りの源泉を獲得できることに加えて、債券のポートフォリオ、特に流動性の高い社債が中心の場合、リスク分散を図ることができると広く認識されています。プライベートクレジットは、パブリック市場の資産とは根本的なリスクやパフォーマンスの源泉が大きく異なるのが一般的であり、特にこの傾向は、実物資産、消費者金融、及び公募市場では比較対象が存在しないような複雑な資産において顕著です。プライベートクレジットはまた、債務者の大半がパブリック市場で資金調達を行っていないため、発行体の分散も図れます。例えば、欧州においては、ハイイールド債を発行しているローンの借手は少なく、またダイレクトレンディングの対象となる「ミドルマーケット」企業は、通常EBITDAが1,000万〜4,000万ユーロであり、この規模の企業は小さすぎで公募市場では調達が難しい状況です。

投資するには適切なタイミングか

『高いインカム収入、短いデュレーション』のプライベートクレジットが機関投資家に恩恵を与えながら資産クラスとして成長することを期待しています。債券投資家は、スプレッドがタイトなこと、バリュエーションが高いことに加え、インフレ率上昇とその抑制のための利上げ策で悩まされているため、魅力的な水準のキャリー収益に対する需要は高くなると思われます。これらは、堅調な需給関係を含む技術的要因の追い風の恩恵を受けているプライベートクレジットが対処できる問題点であることは注目に値します。このことは、低デフォルト率の環境が持続している欧州でプライベートクレジット市場が堅調であることで裏打ちされています。

しかしながら、変動金利の担保付きプライベートクレジットのシニア債権においても、リスク軽減は本質的に厳格な与信審査と慎重な銘柄選択に依存します。与信審査の質と能動的なリスク管理・軽減に焦点を当てている貸手は、刻々と変化する状況のなかで強固なポートフォリオを構築することができると考えます。

投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。数値は過去の実績であり、将来の結果を保証するものではありません。本項に記載されている見解は、投資の推奨、助言、予測に該当するものではありません。当資料は、一般的な情報提供を目的としており、金融商品取引業登録に基づく業務又は当社関連会社が組成するファンドの持分等の勧誘を目的としたものではありません。

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