2022年の欧州ABS展望

10 分間で理解する 10 2月 22

2021年の欧州資産担保証券(ABS)は、変動金利という特性を有していることに加え、強い回復力を見せた労働市場や担保資産の延滞率が低かったことなどの強固なファンダメンタルズを好感した投資家の需要は高く、他の債券クラスをアウトパフォームしました。本稿では、2022年のABS市場の見通しは引き続き良好なのかを考察します。

パフォーマンスが良好であった2021年の欧州ABS市場

2021年の欧州ABSは、金利の上昇が予想されるなかで、金利上昇の影響を受けにくい特性を有している資産クラスを求める投資家から高い需要を集めた1年でした。2021年の環境はインフレ率の上昇であり、その対策として金融政策の正常化が予想されたため、債券のボラティリティは広範に上昇しました。潤沢な投資待機資金を有する投資家の間で、ABSの特性に対する認識が広まったことにより、ABSのスプレッドは優先債・劣後債を問わずタイト化し、特にシニアクラスとメザニンクラスのスプレッド格差は大幅に縮小しました。

『2022年の発行見通しは概ね良好であり、1,000億ユーロ規模になるというのが市場予想です』

堅調なファンダメンタルズが見込まれる個人向けローンを担保としたABSは、全般的に良好な状況が継続すると考えています。政策立案者が支援策を打ち切った現在でも、ローンの延滞率は歴史的に低い水準にあります。

さらに、厳格な審査基準、特に金利上昇に対するストレステストは、個人向けローンの延滞がABSに大きな影響を及ぼさないことに寄与すると考えます。このことは、特に元本毀損に対する強い策が講じられている投資適格クラスにおいてより明確になるでしょう。

2021年のローン担保証券(CLO)に関しては、信用、市場価格、ポートフォリオのストラクチャーなどの指標が改善した1年でした。加重平均格付要因(WARF)のスコアは約150ポイント低下し、CCC格に関しては約1.5%低下しました。レバレッジドローンのデフォルト見通しも改善し続けており、格付機関による2022年予測は下方修正されています。フィッチの基本的なシナリオに基づくデフォルト率予測は、堅調なクレジット市場とワクチン接種の進展を背景に、以前の4.0%から2.5%に下方修正されました1

欧州ABSのさまざまな分野が力強いパフォーマンスを挙げ、一部の国債や社債のパフォーマンスがマイナスになるなか、他の多くの債券クラスをアウトパフォームしました。

発行額が増加した欧州ABS市場

2021年の欧州ABS市場の新規発行額は1,150億ユーロと、好調な年でした。純供給額が増加したことにより市場規模は再び拡大し、投資ユニバースは5,500億ユーロ超と前年比で+約8%となりました2

要因として挙げられるのは、新規発行とリファイナンス・リセット案件の双方でCLOが記録的な発行額となったことです。これは、CLOのスプレッドがタイト化したことと、M&A活動の活発化に伴ってローンの組成額が増加したことが背景にありました。

他の分野では、英国のスペシャリスト住宅ローン(通常では融資を受けられない債務者向けローン)の貸手による住宅ローン担保証券(RMBS)の発行が引き続き増加しました。伝統的に証券化市場にローンを供給する大手銀行が市場から遠ざかっていたことで、英国のバイトゥレット(賃貸物件を購入する貸主[BTL])やノンコンフォーミング(基準を満たしていない)ローンを担保とするRMBSのスプレッドのタイト化が加速しました。

2021年に欧州の商業用不動産担保証券(CMBS)市場が再び活発になったことは、予期せぬうれしい出来事でした。案件数と金額の両方が世界金融危機以降で最大となり、その結果、担保となる資産の種類を含め投資家の選択肢が広がりました。物流施設が依然として最大の分野ではありましたが、市場では研究開発施設などの新しい分野の案件が見られるようになりました。

2022年のABSの発行見通しは概ね良好であり、1,000億ユーロ規模になるというのが市場予想です。そのなかで引き続き発行額が多く見込まれる商品と規模は、CLOが360億ユーロ、続いてRMBSが310億ユーロ、自動車ローンのABSが200億ユーロです。

拡大を続けるESGとSTS市場

以前のM&Gのリサーチで述べたように、ESG分野のABSはM&Gが近年重要視している市場です。2021年に、CLOでない証券化商品のなかでESG要素に特化した案件が8件、合計で46億ユーロ発行されたことは喜ばしいことです。これは、2020年までの5年間の年間発行額が5億ユーロ程度であったことと比較すると大幅な増加と言えるでしょう。特に、以前はグリーン住宅が唯一の担保種類であったのに対して、2021年はソーシャルボンドのほか、社会住宅のCMBS、個人向けローンなどの幅広い種類の担保の案件が組成されるようになりました。

CLO市場では、ESG要素を組み入れた23案件を組成したアレンジャーの数は実に14に上っており、このことは今後12か月で市場が大きく成長する要因であると考えています。投資家のESG案件に対する需要は明らかに高く、2022年はこの分野がさらに発展し成長すると予想されます。

一方、ソルベンシーII規制が適用される保険会社にとって特に重要である「簡潔・透明性・規格化された(STS)」証券化商品の発行も大幅に増加しました。

2021年には、適格担保を有するABSのうち約48%がSTS準拠の分類を受けましたが、この割合は予想をやや下回るものでした。しかしながら、各中央銀行が金融緩和政策を中止し始めているため、2022年はこの割合が約55%に上昇すると予測されています3。また、STS案件がRMBSや自動車ローン担保から、CMBSや個人向けローン担保などの分野に拡大していることは市場の成長にとって好ましいことだと考えます。

2022年の見通しは引き続き明るい

2021年は、金利のボラティリティの高まりにより投資パフォーマンスは近年では相当に悪かった1年であり、伝統的な債券に投資する投資家にとって厳しい環境でした。債券市場は、各中央銀行が公表するフォワードガイダンスに反応する一方で、金融政策正常化の速度が必ずしも予想どおりとはならないことが想定されるため、2022年も金利のボラティリティが高い状況が続くと考えられます。

欧州ABSは、伝統的な債券とは異なるリターンを提供しています。利回りが比較的高いことと変動金利という特性の組み合わせにより、魅力的な投資対象であり続けると思われます。新型コロナウイルス感染症の変異株やインフレ率の上昇という課題は残るものの、M&Gは担保資産のパフォーマンスを楽観的に見ており、変動金利という特性に対する認識がさらに高まることが想定されるため、2022年も追い風を受け続けると考えます。

1 出所:ドイツ銀行リサーチ「European Securitization Outlook 2022」(2021年12月15
2 出所:ドイツ銀行リサーチ「European Securitization Outlook 2022」(2021年12月15日、p4)
3 出所:JP Morgan「International ABS 2022 Outlook」(2021年11月23日、p9)

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