再生可能エネルギー事業への投資を強化

5 分間で理解する 22年3月10日

再生可能エネルギー分野は、インパクト投資家にとって主要な焦点となっており、風力や太陽光など、化石燃料に依存しない、もしくは持続可能なエネルギーのソリューションにプライベート資金を投資しています。2021年の再生可能エネルギーによる発電容量は過去最大となりましたが、2050年までに二酸化炭素排出量のネットゼロを達成するには、増加量を現在の2倍のペースにする必要があるとIEAは警鐘を鳴らしています。

再生可能エネルギー分野へのインパクト投資

電力業界は、気候変動対策において重要な役割を果たす業界です。世界の最新データによると、2010年における温室効果ガス(GHG)排出量の約25%は発電と暖房によるものでした。英国では、エネルギー供給が輸送に次いで排出量が多い産業であり、全国のGHG排出量の約20%を占めています。

再生可能なクリーンエネルギーの供給と規模を拡大し、エネルギーインフラを脱炭素化させることは、経済がより持続可能な道へと移行し、今後数十年にわたって二酸化炭素排出量ゼロを目指す中で、地球温暖化とその破壊的な影響を抑制する戦略の重要な部分を形成しています。

『技術的・財政的な革新とコストの低下により、再生可能エネルギー技術の導入が促進されるとともに、ネットゼロを達成する気運を高めています』


多くのインパクト投資家は、気候変動対策への投資に焦点を当てており、再生可能エネルギー事業へのプライベート資金配分や、クリーンエネルギーに焦点を当てた、新規・既存のインフラプロジェクトへのシニアデット提供を行っています。投資家は、例えば、洋上風力発電の企業プロジェクト融資に、より安定した長期的リターンとキャッシュフローが期待できることに魅力を感じており、さらに、そのような投資が気候変動そのもの、及びそれがもたらす影響の対策として貢献していることに魅力を感じています。

低炭素社会への移行に貢献

国際エネルギー機関(IEA)によると、再生可能エネルギーの発電容量は、2021年に新規導入量として過去最高となりました。またIEAは、今後数年間において、2026年までの世界の発電容量の増加分のうち、再生可能エネルギーが占める比率が95%に達すると予想しています。IEAの2050年ネットゼロエミッションシナリオ(NZE)を見据えて、「…総発電量に占める再生可能エネルギーの割合は、2020年の29%から2030年には60%以上、2050年にはほぼ90%になり、太陽光発電と風力発電が2030年までに世界の主要な発電手段になる…」1としており、再生可能エネルギーが電力の脱炭素化に最も寄与する要素になると予想しています。

世界は転換点にあるのか

世界における石炭による発電量は2019年と2020年に減少したものの、2021年は一転し過去最高となりました。風力や太陽光などの再生可能エネルギーによる発電は近年大幅に成長していますが、一方では、パンデミック後の景気回復による電力需要の増加に対処するために、化石燃料による発電量が増加に転じました。

風力が強いとき

太陽光や風力などの再生可能エネルギー源による発電量の変動幅が大きいことは、電力供給企業にとって悩みの種です。一般的に風力は冬期の数か月間と悪天候時に発電量が大きくなる傾向がある一方で、太陽光は日射量が少なくなり、その結果太陽光発電(PV)パネルの発電効率が低下します。風力発電と太陽光発電は一般的に負の相関関係にありますが、社会のエネルギー需要に完全に対応するには、風力や太陽光だけでは発電量が不足する傾向にあります。電力供給企業のほとんどは、石炭火力ではない信頼性の高いベースロード電力(一定量の電力を安定的に低コストの電力)を必要としています。

長期的な経済性

この数年間で再生可能エネルギー発電の規模とその経済性に大きな進展が見られました。技術的、財政的な革新とコストの低下により、再生可能エネルギー技術の導入が促進され、ネットゼロを達成する気運を高めています。しかし、まだ多くの投資が必要です。

足下では、サプライチェーンの不安定さやエネルギー価格の上昇、原材料費や輸送費などのコスト上昇の加速が短期的には逆風となっていますが、この10年余りで考えた場合、新エネルギーのインフラ設置コスト、ひいてはその発電コストは大幅に低下しました。「2010年以降、太陽光発電と風力発電のコストはそれぞれ85%と49%低下しました。現在、世界の3分の2の国では、既に太陽光・風力発電のコストは石炭や天然ガスの新しい発電所よりも安価になっています…」2

光明が差す太陽光発電

住宅や企業向けの屋根設置型の太陽光発電パネルやメガソーラー用の地上設置用設備など、太陽光発電設備への投資は、近年の低コスト化・高効率化を背景に、加速傾向にあります。IEAの「(2021~2026年の)メインケース」シナリオによると、今後5年間に増加する太陽光発電の容量は過去5年間のほぼ2倍になると予想されています。

正しい方向に風が吹いている風力発電

風力はまた、今日のエネルギーミックス(火力、原子力、再生可能エネルギーなど、さまざまな方法を組み合わせて発電すること)における役割がますます重要になってきており、この10年ほどで、風力発電業界の成長は目覚ましく、競争力を高めています。英国では、陸上風力の発電容量も大幅に増加していますが、洋上風力発電においては、他のどの国よりも発電容量が大きい、世界で最大の洋上風力発電国です。

英国政府は、2019年の「洋上風力セクター合意」の一環として、2030年までに洋上風力発電容量を4倍の40ギガワット(GW)に拡大するという野心的な目標を掲げ、低コストのクリーン発電の世界的リーダーになることにコミットしました。これは、英国の気候変動委員会が、英国がネットゼロを達成するためには、2050年までに洋上風力発電容量を最大100GWに増加させる必要があるとの意見を受けたものです。米国では、最近バイデン政権が洋上風力発電容量を2030年までに30GWに増加させる目標を設定しましたが、実際には、最初の大型プロジェクト(年間800メガワット(MW)の発電量)を承認したに過ぎず、2023年中の稼働を目指しています。

エコノミスト誌は最近、洋上風力発電のみで電力を供給する世界を予測した記事のなかで、「全世界に電力を供給するには、約700万平方キロメートルの洋上設備海域が必要になる」と推定しました。これは、ネットゼロの世界を達成するために、現在稼働している風力発電所の数千倍に相当するとのことです。

実行可能かつ大規模なストレージも必要

各国が2050年までにネットゼロという気候変動目標を達成するには、再生可能エネルギー資源の大幅な拡大と投資が必要であることは明確に認識されています。しかし、再生可能エネルギーの発電能力を十分に発揮するためには、費用対効果の高い長期的なエネルギーを貯蔵する仕組みや水素のような技術もクリーンな電力を送電網や家庭に継続的に供給するために活用する必要があります。

1 IEA『Net Zero by 2050: A Roadmap for the Global Energy Sector』(2021年5月)
2 英国政府『Now is the time to speed up the transition to cleaner energy sources』(2021年11月4日)
3 2020年末に終了した報告期間の数値に基づく
4屋根設置の太陽光発電パネルの証券化商品の担保となる融資案件のうち未完済案件数、2020年6月30日現在
5 証券化商品の担保となる融資の件数に基づく推定値、2020年6月30日現在
6 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)『Harmonized Grid Emissions Factors』を使用して計算
7 M&Gは国連SDGsをサポートしていますが、国連とは関係がなく、またM&Gの運用戦略は国連によって承認されているものではありません
8 2020年の公表生産値
9 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)『Harmonized Grid Emissions Factors』を使用して計算
10 1家庭あたりの年間電力使用量3,079キロワット時(2020年の英国電力・ガス市場局データ)に基づいた試算
11 M&Gは国連SDGsをサポートしていますが、国連とは関係がなく、またM&Gの運用戦略は国連によって承認されているものではありません

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