不動産投資がインフレ環境で有効性を発揮する理由

4 分間で理解する 22年1月12日

インフレ圧力が世界の多くの国に影響を及ぼしているなか、インフレ要因の多くは一時的なもののように見えますが、その要因を払拭できない場合、インフレが根深いものになる可能性があります。このような環境は不動産投資にとって何を意味するのでしょうか。

インフレ率は高い ― ただし、対応策は存在する

需要の急速な回復、エネルギー価格の上昇やサプライチェーン問題が物価上昇の圧力となっています。インフレ率は現在、英国とドイツで過去10年間の最高水準にあります。過去の平均値を上回るインフレ率がどの程度持続するかについてエコノミストの見解は分かれていますが、インフレ圧力が長引くほど、インフレが根深いものになる可能性が高くなります。イングランド銀行は政策金利を3年以上据え置いてきましたが、この状況に対処するため、利上げに踏み切りました。

一方、欧州大陸各国における状況は一律ではありません。ドイツのインフレ率(ユーロ圏のインフレ率の約4分の1を占める)は5%を超えていますが、フランスでは雇用者数が過去最高となっているものの、インフレ率は欧州中央銀行のインフレ率目標である2%に近い状況になっています。ECBの政策立案者によると、ユーロの利上げの条件が2022年中に満たされる可能性は低いとのことです。

インフレ率がさらに上昇するとの懸念は、前例のない財政刺激策の影響により世界中で渦巻くキャッシュの水準は、個人消費が突然急増する可能性と大きく関係しています。それでも、米国とほとんどの欧州の国の貯蓄率に関するデータによると、人々のポケットにあるはずのお金がすでに使われている可能性もあり、貯蓄率がすでにパンデミック以前の水準に戻っていることを示唆しています。エネルギー料金の高騰が家計の購買力を抑制し、インフレ高進の可能性をある程度抑える可能性もあります。

依然として魅力的な相対的価値を提供する不動産

投資家にとって最大の関心事は、低金利時代の終焉が本当に近いのか、そしてそれが不動産にとって何を意味するかということです。債券利回りに対する現在の不動産利回りのスプレッドは大きいのですが、はたして流動性が低いという不動産がもつデメリットを補うに十分であるかです。多くのプライム国でスプレッドがマイナスであった世界金融危機以前とは異なり、下記図表のとおり、現在のスプレッドは過去の平均値を上回っており、金利が上昇しても不動産は魅力的な資産クラスであり続けると思われます。

『不動産の利回りは国債利回りをはるかに上回っているため、金利が上昇しても不動産は魅力的な資産クラスであり続けると思われます』


金融システムにおける債務の額を勘案すると、金利の引き上げは小幅にせざるを得ず、また景気回復が腰砕けにならないように、引き上げは緩やかなペースで実施されるとM&Gは考えています。さらに、金利は信じられないほど低い水準から上昇するのであり、将来振り返ってみれば、引き上げ後の金利も引き続き低い水準であり、かつ、その水準が持続する可能性が高く、不動産価格が上昇する環境も続くと思われます。

このことは、先進国国債などの資産クラスに対する不動産の相対的優位性を保つはずです。なぜならば、低金利が長い間継続している欧州やアジアなどの競争の激しい国においても、不動産利回りは債券利回りをはるかに上回っているからです。

不動産投資はインフレが持続した場合でもある程度のヘッジ効果がある

インフレが一時的なものであるか否かにかかわらず、実物資産である不動産は、その特性により、長期的にある程度のインフレヘッジ機能を提供します。完全なヘッジとはいきませんが、不動産は、供給が有限である物件を賃借したいテナントに対価(賃料)を求める重要な機能を有しているという真の価値を持ち合わせています。経済の一般的な価格水準が時間の経過とともに上昇する場合、不動産価格(および賃料)も同様に、中期的に上昇するはずです。下記図表のとおり、1970年代と1980年代の高インフレ時を含め、過去においては上昇した実績があります。

毎年賃料が更改される賃貸物件のなかで、契約で賃料が消費者物価指数(CPI)などのインフレ指数に明示的に連動する物件は、金利上昇に対するヘッジ機能を提供します。スーパーマーケットなど、ロングリース物件のトータルリターンの源泉は、キャピタルゲインよりも、インカム収入が大宗を占めます。つまり、インフレ率上昇によりインカム収入が増加するだけでなく、インカム収入の分だけ、金利上昇による物件価格の下落リスクを抑制します。

不動産投資はインフレ環境で有効性を発揮

パンデミックからの回復初期に見られたように、経済が順調なときの不動産投資のパフォーマンスは通常堅調であり、需要インフレが加速する場合、名目賃料と物件価格の両方が通常上昇します。M&Gの見解では、インフレが暴走する可能性は極めて低いものの、もしインフレ率を抑えられない場合においても、不動産投資は、特に賃料が契約で物価に連動している場合、中長期的にインフレヘッジの機能を提供します。

1英国国家統計局、ドイツ連邦統計局、2021年11月

2Trading Economics、2021年第3四半期

3米セントルイス連銀経済統計データ、Trading Economics、2021年第3四半期

注:家計資産を含まず

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