ユーロ圏諸国間の極端なインフレのばらつき

2 分間で理解する 22年7月17日

現在のユーロ圏のインフレ率は8.1%ですが、一方EU基準消費者物価指数 (HICP) の上昇率が最も高い国と低い国の差は14.5%と、史上最大となっており、ユーロ圏19か国に単一の金融政策を採用す ることが非常に困難な状況にあります。以下のグラフは、過去における各国のインフレ率のばらつき差を表したものですが、現在の状況がいかに過去の常態と異なるかは一目瞭然です。

1999年に通貨ユーロが導入された時点で通貨統合に参加した国は11でしたが、現在は19まで増加しています。

上記グラフが示すように、ユーロ圏のインフレ率は、通貨統合以来、順調に推移してきたと言っても過言ではないと考えます。2008年以降つい先日まで、欧州中央銀行 (ECB)は低インフレ、低金利、域内諸国のインフレ率の差が小さかったことを前提とした金融政策を採用してきました。新型コロナウイルス感染症が経済の負担となって以来、域内各国のインフレ率の差は確実に拡大、加速しています。

『ECBにとっての課題は、インフレ率が極端に高い国、平均的な国、低い国のすべてに適切な単一の金融政策を見いだすことです』
 

インフレ率が急速に上昇したことにより、現在、ユーロ圏諸国間のインフレ率の差は過去に例を見ない拡大を見せています (最高のエストニアは20.1%、最低のマルタは5.6%)。グラフが示すように、ECBにとっての課題は、経済の状況やインフレサイクルのどの時点にあるかが非常に異なる19の国に対して、画一的な金融政策を採用することです。

「ECBにとっての課題は、バルト諸国をはじめとするインフレ率が極端に高い国、平均的な国、低い国のすべてに適切な単一の金融政策を見いだすことです」とM&G Investmentsの上場債券運用担当の副CIOであるデービット・ロイド (David Lloyd) は述べています。

世界市場の回復が非常に力強い時期に、パンデミック対応の緊急策とそれに伴う量的緩和 (QE) を必要以上に継続したという可能性を否定することができず、ECBは量的緩和から一転して量的引き締めに方向転換しなければならないという現実的な政策ジレンマに直面しています。確かなことは、金利を引き上げなければならないことであり、それも可能な限り市場に混乱をもたらない方法で実行する必要があります。

ECBの舵 (かじ) 取りをさらに困難にしているのは、ユーロ圏諸国間の国債の利回り格差が着実に拡大していることです。「格差」は、ソブリン危機発生の懸念が生じるほどの水準に達しており、ECBは各国の国債の利回り格差への対処を緊急の課題としています。ECBの対処策の強さと基となる考え方は、今後数か月のうちに明らかになると思われます。

なお、2つのコンテンツを切り替えることができる、上記のインタラクティブチャートを使用して、最も高いインフレ率とその国、及び最も低い率とその国、並びに1999年以降のユーロ圏の平均インフレ率をご覧いただけます。

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