ロングリースがもたらすインフレ率に連動し増加が期待できるキャッシュフロー

3 分間で理解する 22年8月9日

不動産への投資は、投資元本の成長という要素があるため、一般的にインフレヘッジ効果が高いと見なされていますが、ロングリースは、リターンの大きな割合をキャッシュフローの増加から得る投資形態であり、質の高いテナントとの間でインフレ率に連動する賃貸契約を締結することにより、より安定したインフレヘッジ効果を提供すると考えられます。

インカム収入を求める投資家が痛みを感じている

この1年における急激なインフレ率の上昇により、多くの投資家は大きな実損を被りました。現金や固定金利である国債、社債の実質金利が大幅なマイナスになったため、定期的なインカム収入を必要とする投資家に最も顕著に影響しました。

配当金が期待できる株式、不動産など、インフレ耐性が一般的に高いと言われている他の伝統的な資産クラスの長期的な見通しは良好です。ただし、短期的には金利情勢や景気循環の変化に対して脆弱性を示す可能性があります。

『ロックダウン解除に伴う経済の再開から今日に至るまでのインフレの推移は、多くの中央銀行が予想していたよりも容易に沈静化させることが困難であることの証明です』

インフレ率に直接連動するキャッシュフローを提供する資産クラスは多くなく、長期投資家にとってロングリースの不動産案件は数少ない選択肢の1つです。投資適格級で質が高く、インフレ率に連動するインカム収入を求める投資家にとって、ロングリースはポートフォリオの実質価値の目減りリスクを軽減し、インフレ率に連動した負債をヘッジする必要がある投資家に分散効果をもたらすと考えられます。

直接的なインフレヘッジ

一般的に、不動産のロングリースにおける契約形態は、セール アンド リースバック、インカム ストリップ、土地部分の賃貸借のいずれかです。英国ではセール アンド リースバックが最も定着している一般的なスキームであり、また、欧州大陸においても人気が高まっています。

運用会社は、所有者 (兼使用者) から物件を購入し、その使用者と長期の賃貸契約 (通常は15~25年、場合によってはより長期) を締結します。

このような賃貸案件は、ほとんどの場合、賃料改定条項という形でインフレヘッジ機能が契約に織り込まれます。通常、英国の賃貸契約は小売物価指数 (RPI) 又は消費者物価指数 (CPI) に連動させますが、その他の欧州諸国は通常、当該国の CPI を参照指標にします。

多くの契約では、賃料に下限と上限が設定されています。通常、賃料は引き上げられることはあれど、引き下げになることはありません。つまり、インフレ率がマイナスの場合でも、賃料は引き下げられません。また、改定率には上限が設定されることが多く、英国の場合は通常 5% ですが、欧州大陸の各国では上限のない契約が少なからず存在します。

賃料の引き上げ幅に上限を設けることで、貸主と賃借人の双方にとって、賃料が長期にわたって支払い可能な水準を維持し、また、インフレ率が非常に高い時期においても、物件の本来的価値から大きくかい離しないことをより確実にします。

間接的なインフレヘッジ

直接的なインフレヘッジ機能に加えて、セール アンド リースバック手法は、適切な場所に所在し、質の高い、価値のある物件を所有することを通じて、間接的ながら、上限が定められていないインフレヘッジ効果を提供します。一般的に、物件の長期的な価値は不動産市況のサイクルの影響を受けますが、安定した金利環境の下では、インフレ率に連動した賃料改定により投資元本の価値が上昇することが期待されます。

将来性の高い不動産物件、とりわけ強力なESG特性を備えた物件は、相対的な希少性とテナント需要の高まりが相まって、インフレに対する耐性がより強固であると考えます。多くのテナントは、自社のESG目標や価値に合致した建物に入居することを希望しています。

近年、サプライチェーンのボトルネックと広範なインフレ圧力により、建設コストが大幅に上昇しているため、質の高いロングリースで構成された不動産ポートフォリオを構築することは以前ほど容易ではなくなってきています。

高品質の物件がもたらす利回りプレミアム

ロングリース案件は、通常の取引形態に比べて複雑であり、かつ流動性が低いため、一般的に、同期間の国債や社債に対して魅力的な利回りプレミアムが期待できます。

案件を組成するには多くの人材と専門知識が必要であるのが一般的である一方、不動産市場は基本的に債券市場よりも流動性が低く、投資家を惹き付けるために、流動性リスクを補うだけのプレミアムが上乗せされるのが通常です。

このため、通常ロングリースの直接利回りは公募債よりも高いのですが、一般的にロングリースで構成される不動産ポートフォリオは投資適格級であり、決して信用の質が劣っているから利回りが高いわけではありません。信用力は、主にテナントの賃料支払い能力を分析することで判断でき、大学、地方自治体、FTSE 100銘柄の企業などは質の高いテナントと言えるでしょう。賃貸物件がテナントにとって重要な施設であることなども、下振れリスクを軽減できる要因になり得ます。

実質リターン獲得の投資機会

ロックダウン解除に伴う経済の再開から今日に至るまでのインフレの推移は、多くの中央銀行が予想していたよりも容易に沈静化させることが困難であることの証明です。しかしながら、政府と家計の双方の債務が既に高水準にあり、資産価格のさらなる下落するリスクを熟慮すると、政策立案者が一定限度を超えた利上げを敢行する状況にはないと考えられます。このような環境下、実質ベースでプラスのリターンを求める投資家は、ポートフォリオの値下がりリスクを軽減し、長期にわたりキャッシュフローの増加を図る目的で、不動産のロングリースなどの代替投資は検討に値すると考えられます。

投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。

本項に記載されている内容は現時点におけるM&Gの見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではなく、また将来の状況やパフォーマンスを予測するものではありません。

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