不動産
3 分間で理解する 22年7月18日
欧州と日本におけるインフレは、燃料やエネルギーなどの価格の高騰といった一時的な要素が引き起こしています。そのため、金利水準は比較的低い (あるいはマイナスの) 状況が継続すると予想されます。
一方、米国と英国ではパンデミック時に「大辞職」が起きたことから分かるように、労働市場の柔軟性が高く、インフレが持続する可能性が高いように見えます。実際、経済の再開が進むにつれて、熟練労働を含めた労働力が不足する事態になり、賃金が押し上げられました。
急速な経済の回復に伴う世界的なインフレ圧力が強まっているなか、ウクライナでの戦争が事態をさらに悪化させています。最大の疑問は、インフレ圧力が世界経済にどのような影響を及ぼすか、そして各国・地域の中央銀行が金融政策によって経済をコントロールし、景気後退を食い止められるかです。
不動産投資のパフォーマンスを向上させるためには、物件に対するテナント需要の拡大を通じて事業を拡大させることが不可欠です。そのため、経済成長の鈍化と生活費の上昇は、企業収益を圧迫し、賃料の伸びの抑制につながると考えられます。
現在の環境では、債券や株式市場における投資家のリスク回避姿勢の高まりを受けて、不動産の利回りに上昇圧力がかかる可能性があります。また、投資家が借入コストの上昇を転嫁するにつれて、賃料水準が上昇する可能性もあります。
金利の上昇とは別に、不確実性の高まりにより、新規投資案件に対する評価が変化してきており、中古物件価格も下落してきています。このことは質に劣る物件により大きな影響を与えています。特に、立地が悪く、かつ賃借期間が短く、ないしは空室状態にある、あるいはリフォームに多額の設備投資が必要な物件が大きな影響を受けています。
このことは、債券利回りが上昇している環境下で最も重要なことです。賃料上昇の見通しが不確実になっているため、なおさらです。しかし、不動産が本質的にもっている低流動性プレミアム、及び実物資産を求める投資額が多額であることにより、引き続きプライム物件は国債よりも高い利回りを提供すると考えられます。不動産投資は、インフレ環境に強いのみならず、他の資産クラスとの相関性が低いという利点があることも見逃してはいけないと考えます。
投資家が債券利回りの上昇に直面するのは今回が初めてではありません。70年代と80年代には、債券利回りが不動産利回りを上回っていたこともありました。ユーロ危機の際も、スペインの不動産利回りは債券利回りと同等の水準にありました。
したがって、レバレッジを用いていない投資家は、オーナーがインフレ率を、一部でも賃料に転嫁できるといる前提があるにせよ、中期的には不動産と債券の利回り格差の縮小を許容できるかもしれません。さらに、短期的な視点に立てば、不動産価格の再評価が債券利回りの変化よりも時間がかかるため、劇的な変化が起こる可能性は低いと考えます。
しばらくの間、不動産の相対価値が低下する可能性はありますが、リスクプレミアムは時間の経過とともに過去の水準に回帰する可能性が高いと考えています。賃料が上昇する可能性が高い市場は、特に利回りを確保することができるように見えます。
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