二酸化炭素の回収・貯留:実行可能で、実効性はあるか、そして投資可能なのか

3 分間で理解する 23年6月5日

2023 年 3 月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「温室効果ガスの排出量を削減するための実現可能で効果的な選択肢は複数あり、すぐに利用可能である」と述べました。最新の選択肢の 1 つである炭素回収と貯留への投資について、M&G Investments の Catalyst 部門責任者である Niranjan Sirdeshpande が考察します。

2023 年 3 月に公表された気候変動に関する IPCC の最新の報告書は、厳しい現実を突きつけました。地球温暖化を 1.5 度に制限する、あるいは目標を超過した場合に温暖化を抑制するには、二酸化炭素、メタン、その他の温室効果ガス(GHG)の排出量を十分な量かつ迅速に削減する必要があるだけでなく、大気中の二酸化炭素を取り除くための積極的な対策も必要とのことです。もはや脱炭素も、森林や土壌などの炭素隔離に役立つ自然吸収源も、十分ではありません。

「IPCC の報告書は、まだ発展の比較的初期段階にある CCS セクターにとって、勇気づけられる内容です。」
 

大気中の二酸化炭素を回収して永久に保存する二酸化炭素回収貯留(CCS)技術の一部は、化石燃料からの移行を遅らせる可能性があることを懸念する一部の運動家から疑問視されてきました。しかし、リスク、コスト、メリットを詳細に検討してきた IPCC の報告書は、CCS は鉄鋼やセメント生産など、排出削減が困難な産業の排出量を削減する上で重要な役割を果たしており1、1.5 度へのすべての道筋で必要な正味マイナスの炭素削減にも貢献している、と述べています。

スケールアップ

IPCC の報告書はまだ発展の比較的初期段階にある CCS セクターにとって、勇気づけられる内容です。CCS は今、多額の投資を必要としています。現在の技術に基づく商業運営施設を建設するにも、また、さらに重要なこととして、よりコスト効率とエネルギー効率の高い新しい炭素除去技術を大規模に展開するための研究開発にも、投資が必要です。

このセクターに公開株を通じて投資する機会は依然として非常に限られています。しかし、気候変動への取り組みをテーマとし、長期的な投資視点、大規模な投資能力を備えた M&G の Catalyst チームは、プライベート市場を通じて炭素回収の開発を支援するための資金を提供する最初の機関投資家の 1 つとなっています。

好事例 

Catalyst が最初に CCS エコシステムに初期段階の株式投資を行ったのは、2021 年でした。投資先は、産業排出者からの二酸化炭素を大気中に放出される前に回収し、北海の海底にある地質構造に貯蔵することを目指す、英国を拠点とする Storegga でした。これが実現すれば、2035 年までに 5,000 万トンの炭素を貯蔵するという英国の現在の目標達成に貢献することになります2。 

2022 年、Catalyst はアイスランドに世界初の大規模かつ商業向け炭素除去プラントを建設したスイスの企業 Climeworks に投資しました。クリーンな地熱エネルギーで稼働するこの施設は、「直接空気回収技術」(DAC)と呼ばれるプロセスを使用して、年間最大 4,000 トンの炭素を大気中から除去し、地下に貯蔵します。既に第 2 プラントが建設中であり、完全に稼働した場合、年間最大 36,000 トンの炭素を回収・貯留できるはずです。この複雑な業界のパイオニアとして、Climeworks は合理的で忍耐強いモジュラーアプローチを採用し、これらのプラントをメガトン規模に拡大していくと私たちは考えています。 

その後、2022 年にカナダの Svante 社に投資しました。同社は産業排出物からのポイントソースと大気からの DAC の両方で炭素を回収するために使用する特殊フィルターを製造しており、再利用や輸送、地下貯蔵を可能にしています。同社はまた、排出者が回収した炭素を持続可能な航空燃料などの新しい材料に変換する方法にも取り組んでいます。

まだ黎明期にある業界ですが、炭素回収が必要であることは今や科学的に明らかです。重要なことは、この高い可能性を秘めた技術を可能な限り迅速に拡大できるよう、資本を投入することではないでしょうか。

1 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、「IPCC 第 6 次評価報告書 (AR6) ,‘Climate Change 2023’」、ipcc.ch、2023 年 3 月 19 日。
2 北海移行局(North Sea Transition Authority)、“二酸化炭素(CO2)の回収・貯留”、nstauthority.co.uk、2023 年。


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本項に記載されている内容は現時点における M&G の見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではなく、また将来の状況やパフォーマンスを予測するものではありません。

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