ライフラインとしての接続性

5 分間で理解する 22年9月20日

デジタル時代となった今でも、世界人口の約半分、37億人が情報通信を利用できない状況にあります。国連は、解決に向けた行動がなければ、「情報格差は新たな不平等になるだろう1」と警告しています。しかし、私たちは、インパクト投資を行うことで、何百万人もの人々にサービスを通じた社会的包摂への道を提供し、持続可能な開発目標(SDGs)に対処し、「ダブルマテリアリティ」を取り入れることができると信じています。

アフリカ中央部に位置するコンゴ民主共和国(DRC)は西ヨーロッパの3分の2に相当する面積を持ち、地球にとって重要な、二酸化炭素を吸収してくれる世界第2位の熱帯雨林であるコンゴ盆地と、マウンテンゴリラが生息するアフリカで最も生物多様性に富んだ保護区であるヴィルンガ国立公園がある国です。

「方法の1つは、携帯電話の普及率が低い地域において、携帯電話サービスへのアクセスを可能にする企業へ投資することです」

しかし、コンゴ民主共和国の国土は広大で、国民は2つのタイムゾーンと膨大な距離によって隔てられていることから、インフラ整備が遅れている9,000万人近い人口にとって、デジタル接続はより重要なものとなっています。世界銀行のデータによると、2020年現在、コンゴ民主共和国の人口の14%2がインターネットを利用し、46%3が携帯電話を契約しているのに対し、高所得国ではそれぞれ98%、80%となっています。

では、投資家はどのようにしてSDG94(産業と技術革新の基盤をつくろう)の実現を目指すことができるでしょうか?また、国の経済の未来の一翼を担うことを望む、増加する若年層の社会的包摂をどのように促進することでインパクトを生み出すことができるのでしょうか?

情報へのアクセスによる参加型モデルの実現

その方法の1つが、携帯電話の普及率が低い地域において、携帯電話サービスへのアクセスを可能にする企業への投資であると考えています。M&Gのポジティブインパクトチームは、コンゴ民主共和国、タンザニア、コンゴ・ブラザビルなどの高成長アフリカ市場で通信タワーを所有、運営するHeliosTowersに投資しています。

M&Gインベストメンツのインパクト投資部門責任者であるベン・コンスタブル・マクスウェルは、「HeliosTowersには、アフリカにおけるモバイルアクセスの拡大につながる質の高いビジネスモデルと社会にとって有益な目標の両方があります」と述べています。「これらの地域は、アフリカで最も人口が増加している地域ですが、携帯電話やその他のインフラが不足しています。デジタル経済の恩恵を受けたいと願う人が増加している反面、恩恵を受ける機会が不足している現状は、明らかに当社が対処すべき課題です」。

コバルト、銅、スズ石、木材など豊富な天然資源を持つコンゴ民主共和国の従来の経済モデルは、大部分が採取型産業で、社会的不平等と環境問題をはらんでいました。このような課題を抱える地域では、資源の採取よりも情報へのアクセスに基づく参加型の開発モデル、つまり重要なサービスへのアクセスを増やすことで情報格差を解消するモデルを目指す機会が多くあると考えています。

グーグルとIFCによるアフリカのインターネット経済に関する共同報告書5によると、アフリカでモバイルインターネットの普及率が10%上昇すると、1人当たりのGDPが2.5%増加するとのことです(世界全体での予測値は2%増)。その場合、デジタル接続が向上することにより、革新的なソリューションの土壌も生まれます。

「アフリカのインターネットの機会は、若いデジタル起業家の才能に支えられている」と、報告書は指摘しています。「スタートアップ企業は、遠隔地の人々の医療へのアクセス、女性の雇用機会、金銭の安全な送金、着金の実現など、アフリカの最も困難な課題の解決に取り組んでいます。データ駆動型、拡張性、アフリカ全土向けのアプローチに合わせた先進技術は、アフリカ人がビジネスを行い、収入を得るための新しい方法となっています」。

「ダブルマテリアリティ」の視点を取り入れる

ダブルマテリアリティによって、投資家は、企業が自社の見通しに影響を与える可能性のある外部要因をどのように管理しているのかという「アウトサイドイン」の視点と、人々や地球に与えている現実の影響に対処する「インサイドアウト」の視点の両方を持つことができると当社では考えています。

「Helios Towersは、モバイル通信用タワーにおいて、1社の移動体通信事業者が利用するだけでなく、最大4社の事業者が利用できるコロケーションビジネスモデルを展開しています。これにより、投資の観点からタワーの使用リスクが軽減されるだけでなく、顧客にとってのコストも下がり、二酸化炭素排出量も削減されます」と、コンスタブル・マクスウェルは説明します。「Helios Towersのビジネスモデルは、コストを削減できて成功の可能性の高いコロケーションのモバイル通信用タワー共有モデルによって、本質的にリスクが低いものとなっています」。

Helios Towersは、2025年までに事業展開している8つの市場でタワー数を10,000基以上に拡大し、特に地方やサービスが行き届いていない地域のタワー数を2025年末までに約1,500基増やすことを目標としています。投資家がこの企業の成長に伴う将来性について、財務的に重要なESGリスクと、人や地球に与える現実的な影響の両方を含めて包括的に把握する際に、「ダブルマテリアリティ」の視点はどのように役立つのでしょうか?

Helios Towersにとって、財務的に重要なESG課題には、従業員の定着、顧客満足、贈収賄や汚職などのリスク管理などがあり、これらはすべて会社の成長見通しや長期的な財務的成功に影響を与える可能性がある要素です。しかし、ダブルマテリアリティに取り組むには、企業にとっての財務的な重要事項と、人々や地球にとっての重要事項を組み合わせることが求められます。

「Heliosは、このコンセプトの優れた実例です」とコンスタブル・マクスウェルは述べています。「このような財務的に重要なESG課題(「アウトサイドイン」)の強固な管理体制だけでなく、経済的エンパワーメントと金融包摂(「インサイドアウト」)を本質的に推進するビジネスモデルも示しています」。

大規模な影響

携帯電話の技術とサービスは、2020年にサハラ以南のアフリカで1,300億ドル以上の経済価値に貢献し6、2025年には1,550億ドルを超えると予測されていますが、この地域の人口のうち5分の1以上の人々が情報通信を利用できず、カバー範囲のギャップは非常に大きくなります。2100年には人口が3倍になる7と言われており、携帯電話とインターネットの接続性は、社会と経 経済の発展を支える上で重要な役割を果たす必要があります。

「課題となるのは、経済的な機会に恵まれない人々やグループに対して、インパクト投資家が情報通信へのアクセス改善を通じて、従来型のインフラのない農村地域においても、モバイルヘルス、教育、銀行などの生活に役立つサービスを利用できるようにすることで、どのように彼らの経済的エンパワーメントを支援できるかという点です。このような方法で、人々はより良い未来のために貯蓄、投資、基盤の構築を行うことができ、同時に、起業家が持続的にビジネスを成長させるための適切な環境を整えることができます」とコンスタブル・マクスウェルは述べています。

1 国連、「世界人口のほぼ半分がいまだ情報通信を利用できず、情報格差が『新たな不平等』になる危険性、事務次長が総会に警告」、(press.un.org)、2021年4月27日。
2 世界銀行調べ、コンゴ民主共和国(data.worldbank.org)。
3 世界銀行調べ、コンゴ民主共和国(data.worldbank.org)。
4 SDG9:レジリエントなインフラ構築、包摂的で持続可能な産業化の推進、イノベーションの促進。
5 Google & IFC、「e-Conomy Africa 2020、アフリカのインターネット経済1,800億ドルの未来」。
6 GSMA、「サハラ以南アフリカのモバイル経済2021」。
7 The Lancet、「サハラ以南のアフリカが2100年までに予測される人口規模を超える可能性がある理由」(thelancet.com)、2020年10月17日。

投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。

本項に記載されている内容は現時点におけるM&Gの見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではなく、また将来の状況やパフォーマンスを予測するものではありません。

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