プライベートデット
4 分間で理解する 23年6月14日
建築環境は、世界の排出量の約 3 分の 1 を占めており、その大半が建物の運営から発生しています 。1不動産における持続可能性の機運が高まる中、金融機関は、ネットゼロ目標の達成に向けた不動産セクターの発展において、重要な役割を果たすことができます。
欧州において、物件の 75% 近くはエネルギー効率が悪く、冷暖房と家庭用温水は市民が消費するエネルギーの 80% を占めています。2欧州議会は今年初めに、不動産のエネルギー消費量と温室効果ガス排出量を削減するとともに、既存の基準を改善する目的で改築率を高めるための措置を採択しました 。3現在、欧州の既存建物の 1% しか改修されていません。2028 年以降、新規開発案件は、カーボンニュートラルである必要があります。
英国では、不動産がエネルギー総使用量の 40%を占め、排出量の約 3 分の 1 を占めています 。4政府は、不動産における「グリーン革命」に拍車をかけるべく野心的な計画を発表し、全ての住宅や企業に対し、エネルギー消費を削減するための厳しい目標を達成するよう求めています。現在の政策下でも、開発業者、家主そして居住者は、建物の環境性能を重視することを義務付けています。
最低エネルギー効率基準(MEES)を定めた規制により、最低エネルギー性能認証(EPC)要件を満たさない物件の賃貸を徐々に禁止(一部の適用除外を除く)し、違反した家主は厳しい制裁に直面します。このことは、金融機関もまた、規制環境の変化に対応し、ESG 基準を考慮する必要があることを意味します。
現在、イングランドとウェールズで非居住者用建物を賃貸するには、EPS レーティングで E 以上を取得することが必要となっています。2030 年 4 月以降は、賃貸用物件は、最低でも B が求められます。イングランドおよびウェールズでは、既存の商業不動産物件の大半(およそ 64% )がエネルギー性能で B 基準以下であることは、不動産セクターにとって大きな課題です 。5実質的には、50 万戸以上の資産が、今後 7 年以内に MEES に適合する必要があります 。6
欧州では、建物基準のエネルギー性能を補足するために一連の基準と付随する技術報告書が設定されました。欧州委員会は、建築部門が、2030 年までに少なくとも 2015 年対比で排出量を 60% を削減するという目標を設定し、2050 年までに気候変動中立を達成するという目標を掲げています。
非居住者用資産の脱炭素化に必要な資本の水準に関する指針はほとんど存在しませんが、費用がかかる取り組みとなるでしょう。既存の不動産物件を改善し、エネルギーロスを減らすためには、地域全体で持続的な改修が必要です。一方で、新規開発では、建物がネットゼロの目標と規制に適合するよう、スマート・ソリューションとエネルギー効率の高い素材を検討する必要があります。
不動産デット投資家は、その投資水準から不動産のネット・ゼロへの移行資金を支援する上で極めて重要な存在となる可能性があります。一方で、貸し手にとっては、建物におけるエネルギー使用状況や、排出量やエネルギー消費を科学に基づいた目標に沿って削減するための方策について、しっかりと理解することが不可欠です。特に融資先について整合的なデータや報告が不足している場合や持続可能性の測定基準が食い違っていたり、ネットゼロが実際に何を意味するのかについて業界全体で定義が定まっていないといった問題もあります。
ネットゼロへの移行に必要な役割として、貸し手は、化石燃料の採取や貯蔵に関連する資産など、環境や社会に有害と見なされる投資を除外しつつ、実物資産の環境パフォーマンスを長期的に向上させることを検討する必要があるかもしれません。
持続可能性を重視する金融機関にとって、強力な ESG 認証、快適さ、アクセスのしやすさを備えた新しいグリーンビルディングに投資機会を見いだすかもしれません。一方で、古いビルを破壊して新しい ESG ビルを開発するのではなく、既存ビルの環境パフォーマンスを改善するプロジェクトに融資することも、大きな機会となり得ます。
新規もしくは既存の商業建物や住宅に融資や借り換えを行う場合、貸し手は一定の基準を満たしているかどうかを確認する必要があります。当社は、EPC とグリーンビル認証は、環境パフォーマンスの測定のために最も手軽に利用可能な、整合的な基準であると考えます。これらの基準は、デイ1(投資初日)から投資期間にわたって評価可能であり、測定可能な改善を示す一方で、借り手の責任も問うことができます。
貸し手は、サステナブル・ファイナンス開示規則で定義されている非効率な不動産資産(2020 年 12 月 31 日以前に建設されたEPC のレーティングが C 以下のもの)の除外を検討するかもしれませんが、融資資金がエネルギー効率の改善に使われ、その資産が改修の完成時に関連する基準を満たすことが見込まれる場合、その資産は非効率と見なされなくなります。関連工事が完成し、特定の適格基準を満たせば、「グリーン・ビルディング」として認定される可能性さえあります。
現在エネルギー要件を満たしていない既存の建物に融資する場合、貸し手は、融資契約にエネルギー性能義務に関する具体的な条項が含まれていることを確認することで、借り手に責任を負わせることができます。これにより、融資先は、エネルギー効率の全体的な改善やグリーンビルディング認証の取得に加え、EPC で B 以上のレーティング、LEED でゴールド以上、または BREEAM で「Excellent 以上」など、特定の基準の達成が求められることになります。
建築環境の脱炭素化を達成するには、主な利害関係者との協力が重要となります。当社の見解としては、投資コミュニティと共有する ESG データの透明性を向上させる上で、EPC およびグリーンビル認証の取得が重要なステップとなります。このデータを用いることにより、グリーン融資と持続可能性連動融資(第三者コンサルタントの定義による)、入居者およびテナントの選別、建物のグリーン認証に向けた改善を測定するための主要なサステナビリティ指標の組み合わせを通じて、不動産のエネルギー性能を向上させることが可能だと考えます。
不動産における脱炭素化の必要性が高まるにつれ、ESGを重視した 資産がますます望ましいものとなっています。貸し手にとっては、投資パフォーマンスを向上させるだけでなく、環境認証の面での信頼性を向上させる潜在的な投資機会となります。
投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。
本項に記載されている内容は現時点におけるM&Gの見解であり、投資に関する推奨、助言に該当するものではなく、また将来の状況やパフォーマンスを予測するものではありません。
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