日本株:日出ずる国の魅力的な投資機会

4 分間で理解する 23年4月5日

日本株は、アクティブな銘柄選択をする投資家にとって、目立たないところに隠されていた投資機会を提供する可能性があります。日本ではコーポレートガバナンスが進化し、株主重視の環境が整いつつあります。そのため、日本の企業文化に配慮しつつ企業と対話する方法を理解している投資家は、付加価値を高め、日本株市場の隠れた潜在力を引き出すことができるかもしれません。

1980 年代の日本は経済大国であり、日本の株式市場は急上昇していました。1989 年 12 月 29 日には、日経平均株価が過去最高値の 3 万 8,9161 円を付けました 。対照的に、1990 年代は非常に困難な時期となりました。バブルが崩壊し、株価は急落しました。バランスシート上の過剰債務を恐れる日本企業は、大半が株主リターンの向上を競うのではなく、キャッシュの蓄積を目指していました。「高度成長の時代」は過ぎ去り、「失われた 10 年」といわれる景気停滞期が訪れました。日本のコーポレートガバナンスは、全体的に当時の国際的なベストプラクティスに遅れをとっていました。

「他の先進国における、より景気循環的なインフレとは対照的に、日本では構造的なインフレが定着しつつあります。これは企業が生産性を加速させるうえで、絶好の環境となる可能性があります。」
 

必要な企業改革に向けた環境が、ようやく整いました。日経平均株価は 2021 年 2 月に節目の 3 万円を超え、実に 30 年以上を経て、1989 年末の過去最高値に近付きました。その背景には、堅調な企業業績とGDPデータに加え、新型コロナウイルスのワクチン開発に関する楽観的な見方がありました 2

日本企業の改革を推進

現在、日本は自助努力によって、今後 10 年間にわたり、世界で最も優れた利益成長を達成する市場となる可能性があります。利益率の向上、増配と自社株買いの増加による資本圧縮、M&A トレンドの加速は、いずれも株主リターンにとって良い兆候といえるでしょう。

10 年前にアベノミクスが登場して以来、日本企業をめぐる環境は大きく変化しました。アベノミクスでは、国が主導してコーポレートガバナンスと資本政策の改善を後押しするキャンペーンを展開し、その後 10 年間は、企業の自助努力による目覚ましい改善が見られました。こうした状況は今後もさらに続く可能性があります。

安倍元首相の改革は、真の改革に向けたインセンティブ構造を促進したことに加え、その達成に必須とされていた制度、行政、法律およびガバナンスの機構を整備するものでした。過去 2~3 年間に大幅な変革が行われたという数多くの証拠が、今日になって現実となって現れています。当社は、その大部分が企業自身によってコントロール可能な要素によって、大規模な価値創造と価値開放の両方が実現するための準備が整ったと考えています。  

日本の企業部門では、発想の構造的な変化が続いています。これは、企業収益、投下資本利益率、株主にとって非常に好ましいものである可能性があります。こうした変化は、10 年前に安倍氏が提唱した改革の 3 本目の矢から始まりました。例えば、2014 年のスチュワードシップ・コードと 2015 年のコーポレートガバナンス・コードの導入は、日本企業がコーポレートガバナンスを受け入れ、より株主重視の経営を確立するための道筋をつけました。

岸田文雄現首相は、こうした企業の改善傾向をさらに促進することを目指しており、企業部門の活性化を政策課題の中心に据えています。

自助努力の機会

日本が世界第 3 位の経済大国であるにもかかわらず 、依然として世界の投資家は日本株市場をほとんど注目していません。目の前にいる龍を、誰もが見落としているのです。企業行動の劇的な変化と、世界の投資家による無関心が相まって、長年の市場経験のある銘柄選択を重視する投資家にとって、日本市場が完璧な舞台となる可能性があります。

日本では、バランスシートと損益計算書の両方において自助努力の大きな機会があります。日本企業のバランスシートは、過剰な資産であふれており、潜在的な価値に満ちています。また過剰な不動産、株式持ち合い、非効率な運転資本も考慮する必要があります。 

損益の面では、10 年間にわたる 2 桁台の増益にもかかわらず、日本企業の利益率は依然として米国企業の半分程度の水準にとどまっています。二重のコスト構造、事業分野の過剰な多角化、不適切な価格設定戦略、デジタルトランスフォーメーションの遅れなどに改善の余地があります。日本の企業部門は現在、以前にも増して強い熱意を持って、こうした問題への対処に取り組んでいます。 

自助努力の機会は、マクロ環境にも見られます。当社は、他の先進国における景気循環的なインフレとは対照的に、日本ではついに構造的なインフレが定着しつつあるとみています。こうしたマクロ環境は、企業が生産性の向上を加速させ、利益率を高めるうえで、絶好の環境となる可能性があります。

エンゲージメントの権利を取得

株主として付加価値を高めるために、投資家は知識と経験を通じて日本企業からの信頼を得る必要があります。しかし、これは一朝一夕で実現できることではありません。日本企業に付加価値を提供し得る、十分な情報に基づいた提案を行うには、投資家は日本の文化や企業沿革を理解する必要があります。

M&G インベストメンツのアジア太平洋株式投資共同責任者であるカール・ヴァインは、次のように説明しています。「株主としての当社の発言力は重要性を増しています。当社は、戦略的レビューや、当社の投資先などから潜在的な顧客、サプライヤー、R&D 提携先を紹介することなどの方法により、この発言力を投資先企業の支援に活用するために尽力しています」。

ヴァインは、「当社は、長年にわたり投資家として日本企業に投資し、対話を実施してきました。そのため、株主として付加価値をもたらす当社の存在は、以前にも増して企業の経営陣に認識されています。当社は引き続き、M&G の強固なスチュワードシップの歴史に裏打ちされた独自の視点を投資先企業に提供し、超過リターンの向上を目指します」と付け加えています。

日本で 25 年に及ぶ投資経験を持つヴァインにとって、対話は投資の「ツールキット」において重要な部分となっています。事業戦略や人事に関する提案から配当方針に至るまで、企業経営陣と積極的な対話を行うことは、アクティブ運用マネージャーの義務であることに加え、企業の真の潜在力を開放するのに役立つと考えています。

 

1. Nikkei Asia、“Nikkei index hits 30,000 for first time in three decades”、(asia.nikkei.com)、2021 年 2 月 15日
2. Nikkei Asia、“Nikkei index hits 30,000 for first time in three decades”、(asia.nikkei.com)、2021 年 2 月 15日
3.  世界銀行、「GDP(名目米ドル)」、(data.worldbank.org)、2023 年 3 月 21 日時点

 

投資元本は変動し、投資から得られる利益は上昇することもあれば、下落することもあり、お客様の投資元本は保証されません。

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