猛烈なインフレはピークを過ぎたかもしれないが、さらなる危険は潜んでいるのか

3 分間で理解する 23年4月26日

市場は周囲の環境の流動性を物語ります。この1年間、市場は各国政府の経済計画、中央銀行の金融政策、エネルギー問題への対処に対して判決を下してきましたが1年前にインフレが構造化して以来、市場は今のインフレをどう受け止めているのでしょうか。

「一般論として、市場はまだ新型コロナウイルス対応の財政・金融策を織り込んでいます。つまり、もう繰り返されることのない一過性の事象ということです。」


「市場はインフレのピークが過ぎたと解釈し、現在は落ち着いた状況にあります」とM&Gインベストメンツの国債運用のシニア・ポートフォリオ・マネジャーであるマイルス・ティムは述べています。

上記図表から読み取れる最大の特徴は、新型コロナウイルス感染症のまん延に伴いディスインフレになることが織り込まれましたが、2022年になると、インフレ率が急上昇すると市場が予想し始めたことです。米国の期待インフレ率は3.73%まで急上昇し、英国においては一時的とはいえ、5%に達しました。

特に英国において、インフレ率がピークに達し、高止まりしているにもかかわらず、状況は大きく変化しています。英国、米国の両国における現在の期待インフレ率は、新型コロナウイルス感染症の対応策以前2~3年前の水準から大きく上昇しているわけではありません。

「市場は、世界各国でインフレが定着する可能性を多少は織り込んでいますが、この1年あまりの間のように、インフレが高進するとは予想しなくなりました」とティムは述べています。

ノイズの向こう側を見る

上記グラフは、英国の現在のインフレ率が一時的であると市場が判断する材料を示しています。2021年から2022年初頭にかけて、英国、米国のインフレ率は連動して上昇しましたが、その後、米国のインフレ率がピークを迎えたことは明らかであり、ピーク時の9%から6%に低下しています。

一方、英国のインフレ率はこの数か月間も上昇を続けており、米国と英国のインフレ率は大きくかい離しています。ただし、両国の5年間の期待インフレ率は長期傾向値に沿っており、英国における今後5年間の期待インフレ率が米国よりわずか1.22%高い水準であるにもかかわらず、英国の期待インフレ率は3.68%と、現在のインフレ率である13.8%と大きく乖離しています。

「市場は、この差が急速に縮小すると見ています」とティムは言います。これが正当化されるかどうかは大きな問題です。

「一般的な見方は『縮小する』でしょうが、そうはならない要因がないとは言えません。なぜならば、妥当だとする議論の前提がエネルギー価格の下落、およびその影響がやや遅れてインフレ率に反映されるからです」とティムは続けます。

様子見の姿勢

英国では、この1年間における公共料金の大幅な引き上げ (2022年4月と10月) の影響もあって、小売物価指数(RPI) が大幅に上昇しています。2023年3月に英大蔵大臣は、エネルギー価格保証制度 (EPG) を2023年6月まで3か月間延長する と発表しました 。7月に公共料金が下がるようであれば、RPIは数%低下する可能性があります。

一般論として、市場はまだ新型コロナウイルス対応の財政・金融策を織り込んでいます。つまり、もう繰り返されることのない一過性の事象ということです。

「米国では、金融引き締めを見越して期待インフレ率が大きく低下していますが、金融市場の値動きは、ここ2~3年で見られたような劇的なものではなく、当面は様子見の姿勢が続くと思われます」とティムは述べます。

1 英国政府『Energy Price Guarantee extended for an extra three months』 (www.gov.uk)、2023年3月15日

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