Structured credit
3 分間で理解する 23年9月12日
特に、銀行の融資が多くの資本を要することから、年を追うごとにSRT取引が一般的になってきました。世界金融危機以降、銀行にとり、IFRS第9号、ならびにバーゼルIII、バーゼルIVなどの会計基準や当局規制により、規制上の資本要件は確実に厳しくなっています。
SRT取引は、銀行がバランスシートに計上している資産を売却することなく、ローン資産の規制上のリスクウェイトを引き下げることによって規制上の自己資本比率を高くすることが可能であるとして、市場に登場しました。換言すれば、SRTのようなシンセティックな証券化は、銀行が増資や資産売却をすることなく、ノンバンクの投資家とリスクをシェアする効果的な手段を提供します。
M&Gインベストメンツのストラクチャード クレジットの責任者であるジェームス・キングは、「SRT市場を活発化させた最大の要因は、ECBが2010年代中盤に、銀行に対する自己資本規制の緩和を図るためにSRTのガイドラインやルールを発表したこと」だと説明しています。
SRT案件は、高いリスクを伴いますが、相対 (あいたい) 取引であること、投資家が中期目線であること、最終的なリスクが銀行の正常債権という比較的安定したものであることから、一般的な公募債券に比べてリターンのボラティリティが低い傾向にあります。最近の英ポンド建てSRT案件の利率は10%以上となっており1、リスクに十分見合ったリターンを投資家が獲得できることが期待できると考えられます。投資家のリターンの主な源泉がキャリー収益である一方、損失は、市場リスクによってもたらされものではなく、ポートフォリオ内の原ローンの損失によってもたらされます。
キングは、「SRT案件にはセカンダリー市場があるにはありますが、相当に限定された市場です。SRTのエクスポージャーを積むのは決して容易なことではありません。株式や社債、キャッシュを保有するのとは事情が異なります。投資家は自らポートフォリオを構築する必要があり、それには相当の時間が必要となります」
「この1年半におけるクレジット市場は投資家によるリスクオフの姿勢が強かったため、最近の案件は過去のSRT案件に比べて非常に魅力的に見えます」と述べています。
キングによると、足元のSRTの一般的な案件は、2021年、ならびに、最近では市場モメンタムが強かった2019年に比べて、厚いスプレッドを提供しています。「現在のSRT案件の担保の質は高く、どのトランシェもローンに厚みがあるため、リターンのボラティリティが低くなっています」
「しかしながら、このような市場環境がいつまでも続くことはありません。現在、市場は『不確実性があり、潜在する追加的なリスクに見合うリターンが必要』と言っているからこそ、このようなリターンを獲得できるのです」
様々なボラティリティが交錯する現在の景気サイクルを考慮すれば、不確実性を、現在のSRT市場は全般的に織り込んでいます。一方では、リスク選好度が回復すれば、SRTリスクのポートフォリオを構築することが難しくなる可能性があります。
現在取引されている案件の多くは、バイ・アンド・ホールドの投資家が主な購入層であり、今後5~8年間は投資家が好リターンを享受できるものと考えられます。SRT市場に対する投資規模は小さく、このことが、スプレッドがなぜ魅力的であるかの一因だと考えます。しかしながら、今後は時間の経過とともに、SRT案件の投資家が増えることが予想され、それに伴ってプレミアムが縮小すると考えられます。こうした要因が相まって、現在はSRT市場への投資時期として非常に興味深いタイミングであると考えます。
最終的には、SRTはクレジット商品として発行され、そのリターンはプールの原ローンから獲得することになります。したがって、投資家にとって原ローンの損失リスクが最大の懸念事項です。しかしながら、投資家は、借り手の集中度が低い分散されたプールを有し、世界金融危機以前から融資業務を積み重ねてきた実績を有する大手銀行をパートナーとすることに焦点を当てる一方、長期的な景気低迷に耐えられるポートフォリオを見いだすための緻密なストレステストを行うことで、リスクの軽減を図ることができると考えられます。
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