プライベートデット
6 分間で理解する 23年8月1日
企業が環境や社会に与えている影響もスコアに反映される可能性があります。したがって、分析対象を拡大させるだけでなく、第三者機関に依存する前に、ESGに対するアプローチ、及びESGが投資家自身にどのように適合するかを十分に理解する必要があります。これは、ファンドのパラメータを設定する際にも該当します。
「持続可能性」の正確な定義は、欧州のレバレッジドファイナンス市場を含め、多くの場で議論されていますが、端的に言えば、環境的・社会的な目的に貢献する経済活動を指します。「持続可能性」とは、循環経済や健康増進に貢献する環境ソリューションや企業活動による収入を意味することがあるかもしれません。サステナブル投資とは、パリ協定に沿って事業を展開している企業に対する投資を指すこともあれば、多様性が高い取締役会や経営陣を擁する企業に対する投資を指すこともあります。このような企業は、社会に有害な分野で事業を行う企業、廃棄物や水を無謀に扱う企業、世界中の従業員が求めることに無頓着な企業ではありません。また、内部告発制度など、社内に不正行為が起こらないための強力な対策を備えている企業であることが多いと考えます。
投資家がそれぞれの投資を評価し、その評価を裏付ける前提を開示する必要があります。ただ、規制上の観点から言えば、サステナブル投資は以下の3つの側面で構成されます。:
3点のすべてに関して、欧州レバレッジドファイナンスを含めた投資戦略を運用する運用会社にとって、投資先の各企業がどのような活動を行い、持続可能性の最低基準値をクリアしなければならないかを正確に把握することは複雑な問題です。用語の正確さ、活動の慎重な分類、一貫性のある測定方法により定義は確たるものになりましたが、それでも異なったアプローチを採用する2つの分析が同じ結果に辿り着くとは限りません。たとえ双方がかなりの精査を受けたとしても、です。
それに加えて、すべての市場参加者を困惑させることもあります。例えば、環境的に持続可能な活動はEU分類法に記載されていますが、サステナブル投資は必ずしもその定義に沿ったものである必要がありません。サステナブル投資がきちんと評価されていることを確認するためには、マイナスのインパクトを与えている要因も考慮に入れる必要があります。また、SFDRは単に開示方法を定めた制度であり、投資がサステナブルかの判断はそれぞれの投資家に委ねられることに注意する必要があります。投資家は投資の評価と、判断の根拠である前提条件を開示する責任があります。
サステナブル投資はサステナブルリンクローン (SLL) やサステナブルリンクボンド (SLB) と必ずしも同義ではありません。また、SLLやSLBはESG指標の達成度に応じたマージンラチェット条項が組み込まれたローンと異なり、市場ガイドラインが完全に遵守されていれば、より厳格になります。いずれも金利条件をあらかじめ設定したESG指標の達成度に連動させます。達成目標がローン・債券の条件に組み込まれているか否かにかかわらず、サステナブル投資の評価において関連性があり、ストレッチが効き、モニタリングされている必要があります。
ちなみに、「グリーンボンド」や「ソーシャルボンド」のように資金使途が限定される商品に対して、SLLとSLBでは、借入人が許容できる「一般事業目的」を資金使途に設定することができるため、借入人は優先的にSLLを選択する傾向があります。SLLに関する原則やベストプラクティスに関する有用なガイダンスは業界団体が作成しています。
企業が目指すネットゼロとは何を指すのでしょうか。投資家のローンやCLOの知識はだんだん深くなってきており、漠然とした主張と、事実を積み重ねた科学的根拠に基づく野心的目標を混同することは少なくなっています。英国のグリーン分類法のような規制は、どのような経済活動がネットゼロを可能にするかを明確に示しています。このタクソノミーでは報告項目が定められているため、企業の設備投資は一貫した内容の報告を見ることができます。そのため、投資家は設備投資の内容を含め、具体的に分析することが可能になっています。
既に自主的に情報開示を広範に実施している企業と、そうでない企業との格差は小さくなると考えられます。コーポレート・サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令 (CS3D) では、気候、サプライチェーン、人権保護1に関する情報開示が義務付けられ、これが完全に実施に移された際は、レバレッジドファイナンス市場の多くの企業 (従業員500人超、純売上高1億5,000万ユーロ超) が対象となります。規制がさらに増えることに対する批判はありますが、規制を増やす狙いは、連日のようにメディアが企業不祥事を取り上げていることから分かるとおり、企業が襟を正して行動するようになることです。
この規制の大部分は進化的な内容であり、(必ずしも完全に同調されているとは言えませんが) 欧州、英国のみならず世界中において真剣に取り組まれています。SFDRは協議の要請に基づいて適応することによって成り立っており、SFDRの内容が絶えず変化することに私たちは慣れる必要があります。市場参加者は、規制が成熟するのに要するであろう期間を、国際会計基準が合意され、定着した期間になぞらえ、70年 と推計しています。この考え方を理解することで、規制当局が抱く壮大な野心を理解することもでき、矛盾点やタイミングのずれがあることは多少は許されるべきだと考えられます。
テーマ型ファンドやインパクト投資ファンドは既にプライベート市場でも多く見られるようになりましたが、一般的にこのようなファンドは、社会・環境に及ぼす利点が明確であり、初期段階から投資家が関与している、定義が明白なプロジェクトや単一目的の企業・プラットフォームにアクティブに投資します。CLOを含むレバレッジドファイナンス投資戦略が、特定の持続可能なテーマ (例えば健康増進) だけを投資目的にするためには、情報開示の質 (及び対象企業) を一段と向上させる必要があります。とはいえ、インパクト投資に投資するCLOが登場することは市場にとって興味深い進展であり、さまざまなタイプのインパクト投資家のニーズとリスク許容度に対応する商品に発展する可能性があります。
資産担保証券におけるESGを評価する一貫したアプローチは市場には存在しません。しかし、これは投資家が独自に枠組みや原則を設けてはいけないことを意味するものではありません。また、ストラクチャードファイナンス商品には、気候変動に関する開示要件が間もなく設けられる予定です。欧州中央銀行 (ECB) が、資産購入プログラムに基づく購入により、世界で最大級のABS保有者であることが理由の1つであると考えられますが、欧州監督当局 (ESAs) とECBは、ABSの発行体、スポンサー、オリジネーターに対し、気候変動関連リスクに関する「質の高い包括的な」情報を積極的に収集するよう求めています2。
欧州レバレッジドファイナンス市場における持続可能性の評価ツールの開発は進展を見せており、規制を考慮すれば、バランスの取れた評価が可能になると考えられます。しかしながら、レバレッジドファイナンスの投資家が、主要な他市場の先例を参考にできるかは今の段階では不明です。
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