欧州の学生用宿泊施設が高い潜在性を有している理由

通過儀礼

多くの若者にとって、高等教育は社会への扉を開くための資格を獲得できる過程であり、多くの場合、大学卒業が重要な通過儀礼です。そのため、海外渡航の再開という追い風を受けて、質の高い学生用宿泊施設に対する需要は高止まりしています。

『高等教育に対する欧州外からの需要が現在のペースで増加することにより、英国よりも手頃なコストで教育を受けられる欧州大陸にある大学の優位性が高まるものと考えられます』

構造的に供給不足が続く欧州の学生用宿泊施設

古くからロンドンは世界における高等教育の中心地であり、世界中から学生が集まります。数十年前に学生専用宿泊施設 (PBSA) が誕生して以降、進化を続けてきたため、今では、学生はロンドンを筆頭に主要都市において、活力に満ち、管理の行き届いた宿泊施設に居住することができます。ただ、欧州大陸では、物件数は増加しているものの質は決して高くなく、多くのゲートウェイ都市 (長距離移動や長距離交易のための交通結節都市) における質の高いPBSAは構造的に供給不足が続いています。

安価な授業料

高等教育に対する欧州外からの需要が現在のペースで増加することにより、英国よりも手頃なコストで教育を受けられる欧州大陸にある大学の優位性が高まるものと考えられます。イタリアは欧州のなかで、特に米国と中国の留学生の人気が高い国の1つです。この要因は、授業料と生活費が安価なこと、世界のトップクラスに上げられる大学が多いこと、並びに英語での授業が増加していることだと考えられます。

注目すべき都市：ボローニャ

ボローニャは、国内外の多くの学生が目指す、世界で最も古くかつイタリア最大のボローニャ大学がある都市です。同大学は、米国のジョンズ・ホプキンス大学と提携関係にあることでも知られています。

ボローニャはたくさんの魅力を提供する都市です。学生人口が多く、バー、コーヒーショップ、アートギャラリーなど、活気にあふれた都市です。他の大都市よりも自転車での移動が簡単であり、また、ミラノから鉄道でわずか1時間の距離にあります。

学生用の宿泊施設の多くは、オーナーから直接賃借する形態であり、通常はボローニャ市がオーナーに資金を提供しています。一方で、簡単に入居ができる安全で設備の整った宿泊施設に対する需要が高まっています。

学生のニーズに対応する

M&Gは、持続可能な方法で積極的に、学生のニーズ及び地元の文化に適合した生活空間を創り出す役割を果たすことを目指しています。ボローニャ大学と高速鉄道の駅の双方から徒歩20分圏内に所在する学生向けの宿泊施設である「リトル・ボローニャ」は、学ぶこと環境と共に、大学での経験を最大限に満喫するためのさまざまな設備を提供しています。

イタリアの母親が子供に沢山の家庭料理を用意するという伝統を尊重して、大きな冷凍庫を備えている共用キッチンに加えて、簡易キッチンが備わっています。学生は、自由に使える学習用の部屋、ヨガスタジオ、ジム、ゲーミング・ポッド (ゲーム用のコックピット型チェア) のほか、街を見渡せるラウンジや他の学生と交流する施設も利用できます。初めて実家を離れて生活する学生、特に海外からの学生にとって、他の学生と交流できる施設やイベントは、ウェルビーイングにとって重要だと考えられます。

建物は、空気熱源ヒートポンプや省エネシステムなどの持続可能な技術を用いて電力が供給されています。LEED (グリーンビルディングの認証プログラム) におけるシルバー認証の取得を目指しています。パンデミック後の、環境に配慮した公共間交通機関以外の移動手段の増加を考慮して、294台分の駐輪場、18台分の電動スクーター用駐車場、自動車用の充電設備も備えています。

市場の変化への対応

コア投資を行う投資家にとって、歴史の浅い欧州の学生用宿泊施設の分野は、住宅用不動産が備えるディフェンシブで分散化が図られている特性に加えて、より高いインカム収入が期待できます。

建築許可の取得から適切な業者の選定に至るまで、利用者のニーズと市場の複雑さの両方を理解することは投資戦略にとって非常に重要です。日常生活に関連するその他の分野や地域での経験や取引先との関係を活用することにより、長期的な価値をもつ質の高い不動産への投資機会をお客様に提供することができると考えています。

¹ スペイン、フランス、イタリアのデータ、出所：Eurostat、2022年10月

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