新たな生活様式と働き方が不動産市場を形成する

5 分間で理解する 23年3月22日

不動産の未来は、若年層、すなわち Z 世代の見通しや文化と密接に関連しています。不動産は長期的な事業であるため、こうした若年層こそ、アセットオーナーやマネージャーが注目すべき居住者や労働者となります。これは、高齢従業員の退職が進む状況においてはなおさらのことです。

将来の居住者

現在の若年成人層は、例えば住宅価格の大幅な上昇の恩恵を受けたベビーブーマー世代などに比べ、経済的に不利な状況にあるとみられます。彼らは、多額の学生ローンを抱えて大学を卒業し、両親の資金援助なしに住宅の購入が困難な傾向にあります。

 

 

また、デジタル革命は、Z 世代の交流の在り方や、場合によっては生計を立てる方法が変わることを意味します。ソーシャルメディアのインフルエンサーの爆発的な増加はその典型です。インフルエンサーは一般に起業家的な性質を持ち、非常に機動力に富んでいます。この文化的な変化は、幸福とワークライフバランスに重点を置く傾向の強まりに反映されています。リモートワークが可能になったことは、こうした傾向に好都合です。

働き方改革は、パンデミックによっても促進されています。従業員が自宅で生産的に働く能力を証明する一方、雇用者は、より幅広い層の人々や、こうした人々にとって重要なライフイベントや役割が多様であることを認める傾向を強めています。ハイブリッドな働き方は、デジタル世界でつながる将来世代の台頭に支えられ、今後も続いていくことは間違いありません。   

新しい生活様式と働き方によって、都市部の拡大と新たな住宅所有形態の普及が加速し、最高水準のオフィスに需要が集中する見込みです。

生活のソリューション

今日では、住宅価格が手が届かないほど上昇し、賃料も上昇しており、世界の主要都市で手頃な価格の住宅を取得する妨げとなっています。政府は、デベロッパーへのインセンティブ支払いや賃料抑制策のいずれかを通じてこうした状況に介入し、居住者の支援に動き出しています。当社は、手頃な価格の住宅の供給を増やすことが究極の解決策であると考えます。これは、英国の分割所有権制度のような新しい住宅所有形態を含め、全体的により多くの住宅を供給することを意味します。こうした措置により、保証金の要件を引き下げ、住宅取得に向けた無理のないステップを提供することができます。他の住宅所有形態と比較した場合、継続的な費用の面でも魅力的と思われます。

 

ハイブリッドな働き方も、手頃な住宅の供給に関する問題の解決策の一部です。より頻繁な在宅勤務が可能になれば、若年層の家族などにとって、都市から住宅価格が手頃な郊外地域への転居が可能となります。 

例えばスペインなどでは、通勤に 90~120 分かかる都市部への引っ越しが現実的になる可能性があります。こうした国々では、高速鉄道インフラによって、より手頃な価格の住宅にアクセスし、主要な雇用ハブに週 2〜3 日出勤するという働き方が容易になっています。結果的に都市部の拡大は、交通アクセスの良い郊外地域において、賃貸住宅や、分割所有といったタイプの補助金付き賃貸住宅のニーズを高める可能性が高いといえます

オフィスの未来

ライフスタイルの変化は、企業が従来と異なる要件を求め、最高水準のオフィスに移転していることに反映されています。環境目標の厳格化や、テナントが人材の誘致や動機付け、また企業文化の醸成を目的にスペースを優先する傾向が強まっていることが主な理由となり、優良ビルと二級ビルとの二極化が進みつつあります。 

M&G によるロンドン金融街の 40 Leadenhall 開発では、現在の規制要件を 30% 下回る炭素排出量を達成し、イギリス建築研究財団環境アセスメント手法(BREEAM)の「Excellent」格付けを取得することを目指しており、現代のテナントの需要に応えています。このビルは、未来の象徴的なオフィスの基準となるように設計されており、リサイクルガス管が建物の入り口に沿って配置されています。設備としては、Pelotonのフィットネススタジオ、30 席の映画館、障がい者支援を目的とした、誰でも利用可能な更衣室などが設置されています。 

「超優良」オフィスの台頭により、テナントは占有面積に関する要件を合理化し、平方メートル当たりのコスト増にコミットする可能性が高いと考えられます。昨年はマンハッタンで、育児、ペットシッティング、ドライクリーニングなどの設備を備える高級オフィススペースへのテナント入居が、契約面積ベースで、2021 年比で 2 倍となりました 。 

金利上昇の結果、不動産市場全体で物件の再評価が起きています。これをきっかけに、現代のテナントの要件に満たないオフィスは、住宅、学生寮、ホテルなど他の用途に転用される可能性があります。ただし、この変化は段階的なプロセスとなる見込みです。  

現代の要件を満たす

新しい生活様式と働き方は、2020~2030 年代の不動産市場を形成し、都市部の拡大と新たな住宅所有形態の普及を加速させ、最高水準のオフィスに需要を集中させると思われます。 

手頃な住宅の供給は、依然として将来世代にとって重要な長期的課題となっており、より多くの賃貸住宅や補助金付き住宅へのニーズが都市部と郊外の両方で高まっています。ハイブリッドワーカーが求める要件を満たす新たな住宅を生み出す能力は、投資家にさらなる機会をもたらします。同様に、家庭では再現できない環境や設備を備えるオフィスビルの提供も魅力的な投資機会をもたらします。    

 

  Economist、“The rise of the uber-luxurious office”、2023 年 1 月

 

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